テーマ : 医療・健康

ウイッグ探しに苦労【アラ還 2人の がん奮闘記⑧】

 ウイッグ探しには苦労した。仕事先に闘病を隠す以上、髪にも違和感がないことが重要だ。行きつけの美容室で医療用ウイッグを購入した。何と24万円!

イラスト・ふじのきのみ
イラスト・ふじのきのみ

 弘美の髪は肩下ぐらいの長さで、ゆるい癖毛のため、毛先はふんわりウエーブがかかっているように見える。弘美はわが家に来て、「脱毛の予行演習だよ」とウイッグを着けてみせた。「まるでオスカル様だね。髪色が薄いし、ウエーブはクルンクルン。毛量が多過ぎて、『かぶってます』感が強い」と私。弘美は「やっぱりねえ。これじゃ使えないよね。高かったのに」と肩を落とした。
 救いの神は思わぬところから現れた。弘美の治療に付き添って2回目。私は病院内の美容室の入り口に「ウイッグ相談」のポスターを見つけた。だが、そこに美しく展示されているのは弘美の物同様の高価なものばかり。
 立ち去ろうとした時、突然、後ろから「通販で、手ごろな価格のウイッグありますよ」と声を掛けられた。声の主は病院内の理容室のご主人。高価な製品の前でため息をついた私の姿を見て、「若い人がおしゃれで着ける安価な製品で十分。持ってきてくれれば、似合うように前髪カットもしますよ」と言ってくれた。
 実は、弘美は一度だけオスカル様ウイッグで仕事先の編集部に行ったことがあった。その時、担当者に「何か変ね。弘美さんらしくないわ」と言われ、とっさにごまかして冷や汗をかいたという。
 通販のウイッグは価格も髪形も、髪色も多彩だった。気に入った製品は3900円。色もウエーブも自然だ。長さだけは少し切ってもらった。弘美は「ウイッグを着けて理容室の鏡の前に座った自分は、前と変わらない感じに見えて、泣いちゃったよ」と言っていた。以降、弘美は通販のウイッグを愛用。24万円の高級ウイッグは押し入れにしまい込んだままだ。
 (藍田紗らら・ライター)

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