テーマ : 医療・健康

若者の市販薬乱用 背景には社会的孤立(竹下秀司/静岡県病院薬剤師会理事)【もっと広がる クスリの世界】

 「OD」という言葉がSNS上で飛び交い、社会問題となっています。これは「オーバードーズ」の略であり、医薬品を過剰摂取することを意味します。事件や事故の原因になることもあり、最近ではニュースで目や耳にすることも多くなっています。
 ODをする多くが10代から20代であり、2021年に実施された「薬物使用と生活に関する全国高校生調査」(国立精神・神経医療研究センター)によると、調査対象となった高校生の約60人に1人が過去1年以内に市販薬の乱用があると回答しています。
 薬の用法を無視して摂取した場合、身体にとって有害な作用が生じ、薬によっては依存症になる可能性があります。SNSには「急性中毒にならない飲み方」や「気持ちよくトリップする方法」などさまざまな情報が散見されますが、薬の効き方は人によって異なるため全く参考になりません。
 しかし、若者にとってSNSからの情報は身近であり、ODに好奇心や興味を持つ人も増えています。風邪薬、せき止め、アレルギーの薬など、手に入りやすい市販薬を使用することもODをする若者が増加している一因と考えられます。
 ODをする理由は「友達がやっているから」「多幸感を味わいたい」「ひどい精神状態から解放されたい」などさまざまです。前述の調査ではODの経験がある高校生には学校や家庭生活に何らかの問題があり、社会的に孤立しているという共通点があります。
 使用される市販薬には販売個数が制限されている商品もありますが、複数店舗、インターネットでの購入が可能であり、規制が功を奏しているとは言えません。現在、特定成分に対して販売規制の強化が検討されていますが、これだけでODの抑止は難しいでしょう。
 販売に携わる薬剤師や登録販売者が積極的に購入者に声かけを行うことも抑止の一助になると言われています。一般の皆さんもODをしている人と関わりを持った時には適正な相談窓口につなぐなど、社会が継続的に関わることがこの問題を解決していくために大切だと考えます。厚生労働省では「精神保健福祉センター」や「こころの健康センター」の薬物乱用防止相談窓口を紹介しています。
 (竹下秀司・県病院薬剤師会理事)

 <毎月第4火曜日に掲載>

いい茶0

医療・健康の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞