テーマ : 医療・健康

生活スタイルが決め手【未来は腸内細菌とともに⑧】

 食習慣は言うまでもなく腸内フローラの形成に大きく関与します。私たちが食べた物のうち、消化吸収しきれずに大腸に届いたものを腸内細菌が食べ、そして助け合い、競い合いながら複雑なコミュニティーを作っているからです。

イラスト・やすだゆみ
イラスト・やすだゆみ

 人は生まれてすぐ、外からさまざまな菌を取り入れ、それらが腸内で増えることでその人の腸内フローラが形成されます。乳児期にはまず、母乳やミルクに含まれるオリゴ糖を利用しやすいビフィズス菌が増えます。
 離乳期以降も食事の影響でフローラは大きく変化し、免疫系が成熟する3歳頃には大人型になります。青年期以降は健康で生活環境も変化がなければ、もう大きく変わらないと分かっています。
 人の腸内フローラは、大きく三つに分類されます。一つ目は動物性たんぱく質や脂肪をよく食べる欧米人に多いバクテロイデスエンテロタイプ。二つ目は食物繊維をよく取る日本人や東南アジア人に多いプレボテラエンテロタイプ。三つ目がそれ以外のいわゆる雑食の人に多いルミノコッカスエンテロタイプです。
 日本人にはビフィズス菌が多いという特徴も見いだされました。また、フローラタイプは人種ではなく、食文化で決まることも分かりました。つまり腸に届く「餌」の種類で生息できる腸内細菌も決まるのです。
 例えばこんなことがあります。アフリカ系米国人の食事は動物性たんぱく質や脂肪が多く、食物繊維が少ない典型的な欧米食です。一方、アフリカの農村に住む人々の食事は食物繊維が多く低脂肪です。大腸がんの発症率を比べると、前者の方が10倍以上も高いとされています。
 両者の食事を2週間交換したところ、腸内フローラの代謝の様子が変わり、前者では腸内の炎症が抑えられ、大腸がん発症に関与する代謝物質も減りました。反対に、後者ではすべてが逆の方向に動きました。
 ただ食文化が同じグループで、かつ健康な人たちであっても、それぞれが持つ腸内細菌の種類やその割合、多様性は異なります。理想的な腸内環境の状態も一人一人で異なります。フローラは個人のライフスタイルをそれほど強く反映しているのです。
 腸内フローラが食習慣や生活習慣で決まると捉えると、逆にそれを活用してフローラを意図的に変えられるとも言えます。これからは、腸内環境に合わせた食事やサプリメント、薬を選ぶ時代になると考えています。
 (福田真嗣・株式会社メタジェン社長)

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