テーマ : 医療・健康

「おひとり様」の助け合い(藍田紗らら/ライター)【アラ還 2人のがん奮闘記①】

 「あすかあさって、時間ある? 子宮がんの再検査があって、麻酔を使うので付き添ってほしいんだけど」。30年来の友人の弘美から連絡が来た。彼女はフリーランスの編集者で、私同様に独り者。還暦前後の「アラウンド還暦(アラ還)」世代だ。

イラスト・ふじのきのみ
イラスト・ふじのきのみ
藍田紗らら
藍田紗らら
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藍田紗らら

 弘美は20年近く、有名院長が経営する婦人科クリニックを受診して更年期症状緩和のホルモン補充療法を受けていた。年に1回の婦人科検診も欠かさなかったが、その検診で異常な数値が出た。院長は「この程度の数値は再検査では問題無いことも珍しくない。うちのクリニックでは、がん患者は3年に1人ぐらいしか出ないから心配ない」と言ったという。
 私は「セカンドオピニオンを受けた方が良くない? 大きな病院に行こうよ」と勧めたが、彼女は「院長に限って診立て違いはないよ」と言った。後で分かったのだが、彼女も不安だったのだ。でも、院長への遠慮でセカンドオピニオンについては言い出せなかった。後に、この判断が大きな間違いだったことが判明する。
 付き添いに話を戻すと、弘美は私に連絡する前に、「困ったときは助け合おう」と話していた別の「おひとり様」にも連絡した。だが、「あすはテニス、あさってはお友達とランチだから無理。気を付けてね。心配してるわ」と断られた。「生活の中心が趣味とお稽古事の人だから、時間を融通してもらえるかと期待したけど甘かった」と弘美は苦笑した。
 「困ったときの助け合い」は、おひとり様同士の会話でよく登場するワードだ。だが、価値観も生活ペースも違い、「自分流」が崩せない同士での「助け合い」なんて実現するのか。私も自分のことのように不安になってきた。ここから、私は彼女のがん闘病に関わっていく。それは「二人三脚」で乗り切った怒濤[どとう]の日々だった。
 (藍田紗らら・ライター)
         ◇
 ライターの藍田さんが、がん診断を受けた友人を支えた実体験をつづります。

 あいだ・さらら 1961年大阪市生まれ、横浜市出身。新潟大大学院博士課程修了。大手新聞社で観光、医療を担当し、編集委員を経て独立。

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