テーマ : 医療・健康

奥能登、看護師離職相次ぐ 拠点4病院、自宅被災も

 能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市の市立輪島病院で、在籍する看護師133人のうち、21%に当たる28人が離職を決めたり、離職の意向を示したりしていることが20日、病院への取材で分かった。輪島病院を含む奥能登地域2市2町の拠点4病院では、看護師が離職する動きが相次いでおり、地域医療体制を維持できなくなる懸念も出ている。

石川県輪島市の市立輪島病院=20日午後
石川県輪島市の市立輪島病院=20日午後
奥能登地域4病院の看護師数と離職意向者数
奥能登地域4病院の看護師数と離職意向者数
石川県輪島市の市立輪島病院=20日午後
奥能登地域4病院の看護師数と離職意向者数

 輪島病院によると、自宅が被害を受け、住めなくなっていたり、子どもの進学や配偶者の仕事の関係で他の地域に移らざるを得なかったりするケースがある。被害が小さい地域などで落ちついて子育てをしたいとの意向を持つ人もいるとみられるという。
 離職防止に向け、武見敬三厚生労働相は20日の記者会見で、被災地の病院に籍を置いたまま、別の公立病院で働ける「在籍出向」の仕組みを検討すると表明した。被害が比較的小さかった県南部の公立病院でいったん働いてもらい、復興が進めば、元の勤務先に戻れる仕組みが想定されている。病院職員が利用できる仮設住宅の整備も進める考えを示した。
 輪島病院によると、来年度の態勢を計画するため、看護師を対象にどういう条件が整えば病院に残るかを尋ねるアンケートを2月に実施した。26人が既に離職を決め、2人が離職の意向を示した。この28人は20代後半から30代が中心だった。
 このほか珠洲市総合病院(珠洲市)は14日時点で、125人いた看護師のうち既に2人が退職、18人が退職意向を示した。公立穴水総合病院(穴水町)は78人のうち3人が退職し、8人が退職の意向。公立宇出津総合病院(能登町)は約80人中、4人が退職届を出した。
 輪島病院では、育休、産休中の看護師が常時10人ほどおり、これに加えて28人が退職すると、175ある病床で運用できるのは50~60床ほどになる見込みだという。地震発生時は110床が埋まっていたが、災害派遣医療チーム(DMAT)が全員を市外に移動させるなどし、14日時点の入院者は約20人となっている。
 輪島病院の河崎国幸事務部長は「2次避難が進み、外来患者数も減って、持ちこたえられている。だが、数年後を考えると、若手がごっそりいなくなるのは組織として致命傷だ」と話した。

 看護職員の離職率 日本看護協会(東京)の全国調査によると、正規雇用の看護師、保健師、助産師、准看護師からなる「看護職員」の2021年度の離職率は11・6%で、前年度から1・0ポイント増加。新型コロナウイルスの感染拡大により、医療現場で混乱などが生じ、高くなった可能性があるという。石川県内の離職率は9・6%で、前年度比1・2ポイント減だった。県看護協会(金沢市)は奥能登地域を支援するため、市立輪島病院や珠洲市総合病院などの公立4病院で勤務する看護職員を募集している。

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