テーマ : 医療・健康

iPS心筋シート移植の治験へ 阪大、拡張型心筋症の重症化防げ

 健康な人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った心筋細胞シートを、重い心臓病である拡張型心筋症の患者に移植する治験を、大阪大の宮川繁教授(心臓血管外科)らのチームが始めることが3日、分かった。2025年度末までに順次、現状では改善が見込めない成人患者4人に大阪大や国立循環器病研究センターで移植する。重症化を防ぐことが狙い。

大阪大病院=大阪府吹田市
大阪大病院=大阪府吹田市

 同様のシートを使った治験は虚血性心筋症で既に行われており、患者の多い拡張型に応用する。
 拡張型心筋症は心臓の筋肉が薄くなって収縮力が低下する病気。息切れしたり、疲れやすくなったりする。薬物などで治療するが、重症になると補助人工心臓を装着し、心臓移植を待つことになる。厚生労働省の推計では国内の患者数は約3万3千人で、虚血性心筋症は約4千人とされる。
 治験ではiPS細胞から心筋細胞を作製。直径約3・5センチ、厚さ約0・1ミリの円形のシート状にし、心臓表面に5枚貼る。シートから分泌される成分により新しい血管の形成が促され、心筋の栄養状態が改善。心機能回復が見込めるという。日常生活に支障がなくなることを目指す。
 宮川教授は「重症化を防ぎ、移植が必要となる患者を一人でも減らしたい」と話している。日本臓器移植ネットワークによると、今年2月現在、拡張型心筋症の移植希望登録者は474人いる。
 iPS細胞による拡張型心筋症の治療では、慶応大が細胞を使った治験に乗り出していたが、参加基準に合う患者が少なく23年10月に終了した。

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