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病気との関係 明らかに【未来は腸内細菌とともに⑤】

 「茶色い宝石」に含まれる情報からは、腸内フローラが私たちの体と想像以上に密接につながっていることが分かってきました。では「腸内フローラが働く」とはどういうことなのでしょう?

イラスト・やすだゆみ
イラスト・やすだゆみ

 フローラを形作る細菌たちは、私たちが食べたもののうち、消化吸収されずに腸まで届いたものを食べ、さまざまな物質を作り出しています。その一部が腸管から吸収されて血流に乗り、全身を巡ります。こうして、良いものも悪いものも各臓器に運ばれ、私たちの生命活動に大きな影響を与えているのです。
 細菌たちの活動は多くの臓器の機能と関係し、その調節機構として働くようにも見えるため、腸内フローラは人体の“もう一つの臓器”とも言われています。
 もちろん大腸がんや炎症性腸疾患など、腸管に関連した病気とは密接に関わります。国立がん研究センターの調べでは、2019年には15万5625人が大腸がんに罹患[りかん]しました。これは国内のがん患者では最多です。潰瘍性大腸炎とクローン病の炎症性腸疾患も患者が年々増加し、20年には29万人を超えました。
 これらの増加の原因に食習慣の変化、特に欧米のような高脂肪、高カロリー食の増加が挙げられています。ここに腸内フローラのバランス乱れの関与がうかがえます。
 この乱れは糖尿病や動脈硬化、肝がんなどとも関連するとされます。一卵性双生児ながら肥満体質と痩せ体質に分かれた兄弟の腸内フローラを無菌マウスの腸に移植すると、マウスはそれぞれの体質を受け継いだとの実験結果も出ています。
 免疫とも深く関係し、フローラの乱れは花粉症やアトピーなどのアレルギー疾患にもつながることが示唆されています。腸にある種の細菌がいなかったり、菌の多様性が低かったりすると、細菌による免疫系への刺激不足でアレルギーにつながると考えられています。
 近年、日本では花粉症の人がかなり増えました。実は感染症とアレルギーとの間には「一方が増えれば、もう一方は減る」という関係があります。アレルギーの増加は衛生環境の改善で感染症が減ったことで、免疫が本来は対象外のものまで攻撃するようになったためとも言われています。特に幼少期にさまざまな菌に触れているとアレルギーになりにくいとの研究結果も出ています。
 さらに腸内の変化は神経系にまで影響することも知られています。次回はこの「脳腸相関」についてお話ししましょう。
 (福田真嗣・株式会社メタジェン社長)

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