矯正で歯肉下がった　移植手術で改善も【歯の診察室】

　問　４０歳女性。マウスピース矯正をしてから、歯茎の下がりが急激にひどくなりました。見た目も気になりますし、歯が抜けてしまうのではと心配です。現在、マウスピースのリテーナーを毎晩つけています。歯肉を移植する手術や、歯肉退縮の今後の予防法についても教えてください。
　矯正の有無に関係なく、年齢とともに歯茎は下がっていきますが、矯正治療をすることにより歯茎の下がりが目立つことがあります。特に下の前歯は歯茎や骨が薄いため、治療前の歯並びや歯の動かし方によって、歯肉退縮が起こることがあるとされています。

　答　歯肉退縮は自然に回復したり、矯正再治療により元の状態に戻したりすることは難しいと考えられます。マウスピースのリテーナーは歯並びの後戻り防止のために必要ですので、担当歯科医師の指示に従って使用してください。
　改善の方法として、歯肉移植術という治療があります。歯周病の治療に分類され、複数の方法があります。歯肉の退縮が改善され、審美的な改善を得ることができ、清掃性の向上も期待できるのがメリットです。デメリットとしては、移植する粘膜を採取しなければならないため、口の中の傷が２カ所になることです。手術は難易度が高いため、日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会などの認定医、専門医を受診してみると良いでしょう。ただ、歯肉や骨の条件によっては治療が適応とならない場合もあります。
　今後の歯肉退縮を予防するためには、柔らかい歯ブラシで適切な歯磨きをすることが大切です。硬い毛先の歯ブラシを当て過ぎたり、強過ぎる力で歯磨きをしたりすると、さらに歯肉退縮を悪化させてしまう恐れがあるため、歯科衛生士の指導を受けましょう。
　マウスピース矯正をする方は歯周疾患が起こりやすくなる成人が多いため、すでに歯肉退縮しやすいリスクを持っています。また、マウスピースを外して歯磨きができるため、ワイヤによる矯正と比較して歯ブラシが強く歯肉に当たるリスクも高くなります。
　（村松恭太郎・静岡県歯科医師会生涯研修部）

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