テーマ : 医療・健康

京大、肺と肝臓を同時に生体移植 世界初、男児に両親と祖父が提供

 京都大病院は4日、全身の臓器に異常が生じる重い疾患の10歳未満の男児に対し、両親と祖父から肺と肝臓の一部を同時に生体移植する手術を実施したと発表した。肺と肝臓それぞれの生体移植や、脳死状態の提供者からの同時移植は実施されているが、生体の同時移植は世界初としている。病院によると、男児は退院し、家族ともに経過は良好という。

肺と肝臓の一部を同時に生体移植する手術の様子(京都大病院提供)
肺と肝臓の一部を同時に生体移植する手術の様子(京都大病院提供)
京都大病院=2013年、京都市左京区
京都大病院=2013年、京都市左京区
肺と肝臓の一部を同時に生体移植する手術の様子(京都大病院提供)
京都大病院=2013年、京都市左京区

 日本は海外と比べると脳死による臓器提供者が非常に少ない。一方で生体移植は提供者にもリスクがあるため慎重な対応が必要。男児は命に関わる状態だったことから複数の医師と家族が検討を重ね、同時移植に踏み切ったという。
 手術を執刀した京大の伊達洋至教授(呼吸器外科)は「複数の臓器が悪化している人でも、移植治療の可能性を示すことができた」と話した。
 男児は関東に住み、2歳で再生不良性貧血を発症。遺伝子変異による疾患「先天性角化不全症」と診断されていた。4歳の時に妹から骨髄移植を受けた。その後、男児は肺の機能が悪化して酸素が取り込めなくなったほか、肝硬変も発症。肝臓と肺の機能が著しく低下し、臓器移植が避けられない状態になった。
 手術は昨年11月に実施。40代の父母から肺の一部をそれぞれ男児に移植した。続いて60代祖父から肝臓の一部移植も実施。計18時間をかけ、約30人のスタッフで行った。
 男児は1人で歩けるようになり、今月1日に退院。先天性角化不全症自体には根本的な治療法がなく、今後も症状に応じた治療を続ける。両親は「当初は絶望的な気持ちでしたが、(移植の)提案が私たち家族にとっては唯一の希望でした。皆さまのサポートで順調に回復することができました」とコメントした。

 生体移植 生きている人から臓器の提供を受けて、必要とする患者に移植する手術。体内に二つある腎臓のうちの一つを移植したり、再生力がある肝臓の一部を切り取って移植したりするのが代表的で、脳死や心停止後の臓器提供が少ない日本では移植の大部分を占める。国内では原則として親族間に限られる。肺の提供者は手術後に肺活量が低下するなど移植にはリスクが伴うため、提供者の十分な理解と同意が必要となる。

いい茶0

医療・健康の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞