テーマ : 医療・健康

受精卵着床の過程、iPSで再現 京大が世界初、不妊症の解明期待

 人の受精卵(胚)が子宮に着床する前後の過程を人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを使って再現したと、京都大の高島康弘准教授(再生医学)らのチームが5日、英科学誌ネイチャーに発表した。着床前後の過程を再現した胚モデルは世界初という。

iPS細胞などから作製した培養9日目の人の胚モデルの顕微鏡写真(京都大提供)
iPS細胞などから作製した培養9日目の人の胚モデルの顕微鏡写真(京都大提供)

 胚を使う研究は生命尊厳の観点から制限されており、受精卵が個体に成長するまでの過程は謎が多い。大量に増殖できるiPS細胞などから作製した胚モデルは試験管内で体系的に研究することが可能となる。不妊症や、妊娠初期の胎児に先天異常が起きる仕組みの解明などにつながることが期待される。
 チームは、受精から間もない状態に近く狙った細胞に成長させやすいiPS細胞と胚性幹細胞(ES細胞)を準備し、初期の胚を構成する2種類の細胞を同時に誘導。後に体になったり胎児の栄養となったりする細胞で、混ぜ合わせておくとそれぞれが外側と内側に分離した2層の球状構造が形成された。
 胎盤の機能を担う別の細胞も誘導し、特殊な膜で隔てて球状構造と一緒に培養。するとこの細胞から情報伝達物質が放出されるなどして球状構造の中心に胚と似た空洞構造が形成されることを確認した。
 チームはこの胚モデルを9日間程度培養。着床後の胚に体の基本構造が形成される段階まで再現した。
 胚モデルは将来的に人の胚と同等の機能を持つ可能性が否定できない。膜を使わずに細胞同士を接触させればより胚に近いモデルとなるが、チームは「倫理的な観点から」(高島准教授)見送ったとしている。

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