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【第1章】危機意識の低下③ 旧耐震基準の老朽住宅 住んでいても補強可能【東海さん一家の防災日記 南海トラフ地震に備える/いのち守る 防災しずおか】

 いつ起きるか分からない南海トラフ地震に市民はどう備えるべきか。自治会・自主防災会会長の東海駿河[とうかいするが]さん(71)と妻の伊豆美[いずみ]さん(66)、長男の遠州[えんしゅう]さん(36)親子、長女の富士子[ふじこ]さん(33)の3世代をモデルに、自助、共助の取り組みを考える。

家の耐震化
家の耐震化
築46年の住宅に耐震補強を行う工事現場。筋交いを追加し、接合部を金具で固定する=静岡市清水区
築46年の住宅に耐震補強を行う工事現場。筋交いを追加し、接合部を金具で固定する=静岡市清水区
明日へのメモ
明日へのメモ
家の耐震化
築46年の住宅に耐震補強を行う工事現場。筋交いを追加し、接合部を金具で固定する=静岡市清水区
明日へのメモ


 地域の公民館で開かれた自主防災会の会合後、東海駿河さんは副会長の大池将斗さん(70)から相談を受けた。築50年で老朽化した自宅の木造住宅を耐震補強したいが、費用や効果などがよく分からないという。
 「高齢者世帯なので『家にお金をかけても』と思ってきたが、熊本地震などで住宅が倒壊した姿を見て心配で」と大池さん。静岡県と市町が連携する補助事業「TOUKAI(東海・倒壊)-0」で無料耐震診断を受けたところ、1・0以上の数値が求められる「上部構造評点」が0・5だった。
 建築基準法施行令で耐震基準が引き上げられた1981年5月以前に建てられた「旧耐震」の住宅は、震度6強以上の地震で倒壊する恐れがある。10年ほど前に自宅を耐震補強した東海さんは「費用や工法などは施主が何を望むかによって幅広い。耐震補強に詳しい工務店や建築事務所に相談してみては」と勧めた。
 大池さんは県耐震診断補強相談士の資格を持つ山内工務店(静岡市駿河区)の鈴木良平社長(69)に相談した。耐震補強には①壁の量を増やす②壁に筋交いを入れて金具で固定する③基礎を補強する④重い屋根を軽くする-などの方法があるという。「住み続けながら1部屋ずつ工事していくことも可能です」と鈴木社長。耐震補強に特化した工事なら200万円前後でも可能で、静岡市の場合は上限115万円の補助(市町により額は異なる)を受けられると説明してくれた。
 耐震補強に加え、在宅中の熱中症やヒートショック(急激な温度変化に伴う失神や心筋梗塞など)を防ぐ断熱性向上も組み合わせたリノベーション(改修)を提案する企業もある。費用は増すが家の機能は高まる。同市清水区の池田建設は8月上旬、築46年の住宅改修現場の見学会を開いた。
 見学会では壁に筋交いを加え、接合金具一つにつきネジ13本で入念に固定していた。大池さんは「リノベーションで家の安心感が高まれば子どもに譲りやすくなるかも」と語り、同社の加茂昌代さん(48)は「地震の際、避難所に行かずに暮らしたい人は耐震補強を考えてみては」と話した。
 静岡県の補助事業 25年度で終了  県によると、2001~22年度、住宅耐震化補助事業「TOUKAI-0」を活用し、2万5818戸が補強工事を行った。県内の住宅耐震化率は18年時点で89.3%と全国平均を上回る。それでも耐震性不足の木造住宅は13万戸残っている。県第4次地震被害想定によると、南海トラフ巨大地震の際に地震で全壊する住宅は最大約19万棟と見込まれる。
 県はこれらの住宅に耐震補強を促すためTOUKAI-0による無料診断は24年度、補強工事は25年度で終了する方針を示した。県建築安全推進課の篠原靖幸副班長は「20年以上継続してきて補助事業の申請は年々減少している。残りの期限を決めて呼びかけ、事業の総仕上げを図りたい」と説明する。
 古いブロック塀にも撤去や改修の補助制度がある。高さが2メートルを超えていたり鉄筋や基礎が不足していたりすると危険なため、上部をアルミフェンスに替えたり壁を補強したりする改修や撤去が推奨されている。

 「東海さん一家の防災日記」で取り上げてほしいテーマや、地域・家庭での特色ある活動、県や市町の防災行政への意見などを募集します。情報を基に取材をさせてもらう場合もあります。お住まいの市町名、氏名またはペンネーム、年齢、連絡先を明記し、〒422-8670(住所不要) 静岡新聞社編集局「東海さん一家の防災日記」係<ファクス054(284)9348>、<Eメールshakaibu@shizuokaonline.com>にお送りください。
 

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