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記者コラム「清流」 警戒区域解除の日

 熱海市伊豆山の大規模土石流の被災地に設けられていた立ち入り禁止の警戒区域が解除された1日、被災者の男性が庭先の水道の蛇口をひねると、茶色に濁った生ぬるい水が出てきた。「大丈夫、ここの水はすぐに冷たくなるから」。男性はそう言うが、水は一向に冷たくならなかった。
 男性宅は電気も通っていなかった。隣も、その隣の家も同じ。自宅への出入りが自由になったとはいえ、とても生活できる環境ではなかった。「人災」に日常を奪われ、自宅に2年以上も帰れない。そんな理不尽に直面している被災者の胸中を思うと、かける言葉が見つからなかった。
 「警戒区域解除」という言葉がひとり歩きし、悲劇の風化が進まないか心配している。被災地、被災者の苦悩が続いていることを忘れてはならない。
(政治部・豊竹喬)

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