テーマ : 熱海市

図書館ない離島の子に本を 熱海中心街→初島小中へ漁協職員配送「子どもの喜ぶ姿が原動力」

 静岡県内唯一の離島である初島(熱海市)には、図書館がない。「島の子どもに図書館の本を自由に読ませたい」。地元関係者の思いが結実し、海を挟んだ中心街にある市立図書館の本が今夏から、初島小・中に配送されるようになった。市役所と学校の間をつなぐ船の荷物便を配送手段として活用。読書の秋を迎え、児童生徒は自らネット予約した本が手元に届くのを日々心待ちにしている。

漁協職員の杉本均さんから図書館の本を受け取る中石陸斗さん(手前右)。海を越えて配送された=10月上旬、熱海市立初島小・中
漁協職員の杉本均さんから図書館の本を受け取る中石陸斗さん(手前右)。海を越えて配送された=10月上旬、熱海市立初島小・中
海を越えて届いた図書館の本を手に笑顔の中石陸斗さん。「たくさん読みたい」と話す=10月上旬、熱海市立初島小・中
海を越えて届いた図書館の本を手に笑顔の中石陸斗さん。「たくさん読みたい」と話す=10月上旬、熱海市立初島小・中
図書館の本が入った袋。漁協職員の杉本均さんが初島の子どもに届ける=10月上旬、熱海沖
図書館の本が入った袋。漁協職員の杉本均さんが初島の子どもに届ける=10月上旬、熱海沖
初島行きの定期船に積み込まれる郵便や荷物。図書館の本も一緒に運ばれる=10月上旬、熱海港
初島行きの定期船に積み込まれる郵便や荷物。図書館の本も一緒に運ばれる=10月上旬、熱海港
初島の子どもがネット予約した本を仕分ける職員=熱海市立図書館(同館提供)
初島の子どもがネット予約した本を仕分ける職員=熱海市立図書館(同館提供)
漁協職員の杉本均さんから図書館の本を受け取る中石陸斗さん(手前右)。海を越えて配送された=10月上旬、熱海市立初島小・中
海を越えて届いた図書館の本を手に笑顔の中石陸斗さん。「たくさん読みたい」と話す=10月上旬、熱海市立初島小・中
図書館の本が入った袋。漁協職員の杉本均さんが初島の子どもに届ける=10月上旬、熱海沖
初島行きの定期船に積み込まれる郵便や荷物。図書館の本も一緒に運ばれる=10月上旬、熱海港
初島の子どもがネット予約した本を仕分ける職員=熱海市立図書館(同館提供)

 初島小・中の児童生徒はタブレット端末を用いて市立図書館の本を検索・予約している。最短で予約した日の翌日に本が船便で届くという。初島小4年の中石陸斗さんは10月上旬のこの日、夏休み中に借りた図鑑の続編を受け取り、「いつ来るかな、と楽しみにしていた。同じシリーズの本をたくさん読みたい」と声を弾ませた。
 初島に図書館の本を運んでいるのは、初島漁協職員杉本均さん(62)。初島―熱海港間を30分で結ぶ富士急マリンリゾートの定期船にほぼ毎日乗船し、初島宛ての郵便や荷物を配送する業務を約20年前から請け負う。初島の児童生徒に貸し出される図書館の本は市役所で集荷し、定期船に積み込む。「子どもの喜ぶ姿が原動力だね」。杉本さんの顔に笑みがこぼれる。
 初島小・中は児童生徒10人の小規模校で「図書室の蔵書数に限りがあった」(関口直校長)。市立図書館がバスで巡回する移動図書館も離島は対象外。「誰が初島に運ぶのか、配送先の窓口をどうするのかが長年の課題だった」と市立図書館の担当者は振り返る。学校司書の提案を受けて配送方法を探り、杉本さんが担当する船の荷物便の存在を知った。学校を窓口とする配送の仕組みを整え、7月下旬に運用を開始した。
 市立図書館の蔵書数は18万6千冊で、このうち16万冊が貸し出し可能だ。小林啓一館長は「本を読むという平等の機会を島の子どもに提供できて、本当にうれしい」と目を細める。初島の子どもだけでなく、一般向けにも貸し出しの対象を拡大できないか関係機関と検討するとしている。
 (熱海支局・鈴木文之)

いい茶0

熱海市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞