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社説(3月28日)静岡県内商業地の地価 上昇基調持続へ政策を

 国土交通省が発表した公示地価(1月1日現在)は、新型コロナウイルス感染症5類移行による社会経済活動の正常化などで、全用途の全国平均が前年比2・3%上昇し、バブル崩壊後で最大の上昇率となった。ただ、地方圏(札幌、仙台、広島、福岡の地方四大市を除く)は0・7%上昇と、三大都市圏(3・5%)、地方四大市(7・7%)ほどの勢いはない。
 静岡県は0・1%下落と16年連続マイナス。県外のように大手半導体メーカー進出や外国人の別荘需要増、鉄道延伸などの特徴的要因はなかったが、用途別で商業地は4年ぶりに上昇に転じた。商業地上昇率トップは観光客でにぎわい、出店需要が高まる熱海市熱海銀座地区の13・2%。
 県内では前年も調査した161地点のうち、前年より25地点多い77地点で上昇。全国的な回復基調を取り込み、緩やかな地価上昇が持続するよう、効果的な施策を自治体に求めたい。
 商業地は県全体で0・2%とプラス転換したとはいえ、人口10万人以上の県内10市のうちプラスは静岡、浜松、三島、藤枝の4市のみ。いずれも前年に続いてのプラスだった。他の6市もマイナス幅が縮小し数字の上で回復基調は見られる。何をすればプラスにできるか、もうひと押しを市役所全体で考えてほしい。
 土地は投資の対象であって投機のためにあるのではない。ポストコロナと日銀がマイナス金利政策を解除して「金利のある世界」になった今は、駅前再開発ビルなど中心市街地活性化事業の費用対効果を検証した上で次に進む時期と言えよう。自治体には空きビルや空き店舗を活用した継続的なスタートアップ支援など、未来につながる戦略を考えてもらいたい。
 本県住宅地はマイナス0・2%と16年連続の下落。上昇地点が増え、横ばい・下落地点が減り、下落幅は縮小したものの、医療・子育て環境を含む生活の利便性や災害リスクの観点から地域別で地価動向の二極化が加速している。金融政策転換による住宅ローン金利上昇のほか、建築費上昇、賃上げなど、不動産需要にとどまらず定住・移住促進をはじめとしたさまざまな政策に影響が出かねない。
 地価の上昇は、市町の基幹税目である固定資産税の税収増につながる。地価上昇基調を維持して自主財源を安定的に確保するためにも、中長期的かつ戦略的な自治体経営戦略が要求される。
 利便性の高い中心商業地と閑静な郊外住宅地をバランスよく持続化させる土地政策が自治体には求められる。そこには農地政策も絡んでくる。実情を踏まえ身の丈に合った政策を進める必要がある。

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