テーマ : 熱海市

社説(3月25日)新入幕優勝 若手台頭を躍進の力に

 大相撲春場所で新入幕の東前頭17枚目尊[たける]富士が13勝2敗で優勝を果たした。1914年(大正3年)夏場所の両国以来、実に110年ぶりの快挙だ。初土俵から10場所目の優勝は、両国の11場所を抜いて最短記録を更新した。学生相撲出身の24歳。今場所は同じ学生相撲出身で一足早く入幕した23歳の大の里も好成績を収め、優勝争いを繰り広げた。今後のライバル関係を予感させる若手の活躍が、角界に新風を吹き込んだ。
 春場所の直前、幕内北青鵬の後輩に対する暴力行為が発覚して引退を余儀なくされ、師匠の宮城野親方(元横綱白鵬)も2階級降格の処分を受けた。場所中には唯一の横綱照ノ富士が腰のけがで休場。大相撲離れにつながってもおかしくない状況だったが、尊富士や大の里の活躍に救われたと言えよう。昨年、二場所連続で優勝争いに絡んだ熱海市出身で21歳の熱海富士も今場所、勝ち越した。角界は暴力問題の絶えない旧態依然とした体質を改め、これら若手の台頭を力に大相撲人気をさらに高めたい。
 尊富士は青森県出身。日大相撲部を経て2022年8月に熱海富士と同じ伊勢ケ浜部屋に入門した。9月場所で初土俵を踏み、以来9場所での幕内昇進も歴代1位タイのスピード出世だ。今場所は12日目に大関豊昇龍に敗れるまで11連勝。新入幕初日からの連勝としては昭和の大横綱大鵬の記録に並んだ。千秋楽は前日に痛めた右足首のけがを押して出場し、勝利した。一方の大の里は石川県出身。日体大相撲部時代の実績は、けがで大きな実績が残せなかった尊富士を上回り、幕下付け出しでの入門が認められた。初土俵から4場所での幕内昇進は歴代3位タイの記録。
 2人は今場所、番付上位の力士からも勝ち星を挙げ実力を示した。体格にも恵まれ、今後さらに番付を上げて角界を背負って立つことが期待される。熱海富士や、焼津市出身で幕内最軽量ながら切れ味鋭い技が持ち味の翠富士ら静岡県出身力士には、2人に負けない活躍で大相撲を盛り上げてもらいたい。
 ただ、若手の華々しい活躍は上位力士やベテランの不調の裏返しと見ることもできる。複数の上位力士が欠場したり、けがで負けが込んだりする状況は決して角界のためになるまい。けががつきものの競技とはいえ、20代前半で引退する力士が多い実情を見れば、角界全体として力士のけが防止、健康維持の対策にもっと力を入れるべきだ。
 大相撲の持続的発展には、多くの子供たちが相撲を楽しめる環境をつくることが不可欠だ。伝統を重んじる国技といえどもプロスポーツとしての近代化は避けて通れない。

いい茶0

熱海市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞