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熱海土石流 盛り土崩落地そばに集水用穴 判読不明文書に写真

 熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、約20年前の無許可開発時、盛り土崩落地のそばに雨水を地下に浸透させる集水用の穴が設置されていたことが8日までの県や複数の専門家への取材で分かった。県が白黒化して判読できなくなっていた行政文書などに記載されていた。専門家は、分水嶺(れい)付近に穴を掘るなどの乱開発で逢初川源頭部は隣の流域から水が集まる場所になったとし、当時、源頭部で盛り土を強く規制しなかった県の対応を問題視した。

熱海市伊豆山の土石流起点の乱開発状況
熱海市伊豆山の土石流起点の乱開発状況
行政文書に掲載された集水用とみられる穴(上)と雨水流出箇所のカラー写真。県が白黒化し、情報が分からなくなっていた
行政文書に掲載された集水用とみられる穴(上)と雨水流出箇所のカラー写真。県が白黒化し、情報が分からなくなっていた
熱海市伊豆山の土石流起点の乱開発状況
行政文書に掲載された集水用とみられる穴(上)と雨水流出箇所のカラー写真。県が白黒化し、情報が分からなくなっていた

 県や市の行政文書によると、穴は逢初川とその北側を流れる鳴沢川の分水嶺付近にあり、市の非公表文書の図面には2カ所記されていた。県が当時の担当職員に確認したところ、1カ所については「(雨水を集める)浸透枡のようなものを作っていたのではないか」と証言した。
 行政文書や複数の専門家によると、当時、開発業者は鳴沢川の川筋を埋めて宅地を造成中で、造成地に雨水や土砂が流れ込まないように上流側の無許可開発区域などに穴を掘り、雨水を穴に誘導したとみられる。文書には、地下に浸透した水が鳴沢川流域で確認できず行方が分からなくなったことが記され、標高の低い逢初川源頭部の谷に湧出していた可能性がある。この谷は2003年に土砂崩れが確認され、谷の斜面に積まれた盛り土の崩落が21年7月3日の大規模土石流の最大波につながったとみられる。
 判読できなくなっていたカラー写真には、分水嶺付近の穴のほか、雨で土砂が谷に流出した状況なども写っていたが、県が規模に関係なく盛り土を規制したり、業者に崩落防止の擁壁などを設置させたりした記録は残っていない。県は第三者委員会にこれらの情報を提供せず、検証されていない。土石流災害に詳しく、熱海土石流発生直後に隣接流域からの水流入の可能性を県に情報提供していた技術士(森林土木)の坂本学さん(60)は、行政文書を分析した上で「開発行為に伴う水(表流水と地下水)の流入が盛り土崩落に影響を与えた可能性がある。県は当初から(源頭部で)盛り土を規制すべきだった」と指摘した。
(社会部・大橋弘典)

 熱海土石流の県行政文書不適切開示問題 土石流起点付近の過去の開発に対する行政指導などを記した文書が判読できない状態で報道機関などに提供された問題。県職員が複写機の通常設定を白黒・高濃度に変更したためと県は説明している。判読できない文書は一部に限られ、2003年に開発業者が逢初川と鳴沢川の分水嶺をまたいで無許可開発した文書を中心にカラー写真が見えなくなっていた。無許可開発が逢初川源頭部に及んでいたと分かる行政文書も黒塗りして開示されていた。

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