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庁内調査ずさんさ露呈 職員聴取の記録なし「推論で報告」 静岡県の開示文書判読不能問題

 28人が死亡した熱海市伊豆山の土石流災害を巡るカラーの行政文書が静岡県職員の複写機の設定変更によって白黒化されて判読できない状態で開示された問題で、経緯を調査した県法務課が、開示作業を担当した職員の聴取記録を作成していなかったことが18日までの県への取材などで分かった。同課は担当職員への聴取をしないまま、川勝平太知事に「推論」で文書問題の調査結果を報告したとも説明していて、県による庁内調査のずさんな実態が浮き彫りになっている。

白黒化されて写真部分が判読できなくなった県の行政文書と記者会見する川勝平太知事(左下)を組み合わせたコラージュ
白黒化されて写真部分が判読できなくなった県の行政文書と記者会見する川勝平太知事(左下)を組み合わせたコラージュ
熱海土石流の県行政文書問題に関する専門家3氏の見方
熱海土石流の県行政文書問題に関する専門家3氏の見方
白黒化されて写真部分が判読できなくなった県の行政文書と記者会見する川勝平太知事(左下)を組み合わせたコラージュ
熱海土石流の県行政文書問題に関する専門家3氏の見方


知事は疑問視せず
 静岡新聞社が職員の聴取内容を記録した資料を情報開示請求したところ、県は「不存在」と通知した。同課は取材に対し、詳細な記録を残していないことを認めた。
 県は4月、問題の経緯を調べると表明。川勝知事は5月以降の記者会見で「(判読できない文書の情報を)隠す意図はなかった。(カラーの大量の文書に)気が付かない場合もある」と強調し、その根拠として職員聴取の結果を挙げてきた。しかし、9月5日の会見で聴取の具体的内容を問われると論点をずらした発言を繰り返し、担当職員の独断か、誰かの指示なのかについても回答を避けた。
 9月の知事会見に同席した森隆史法務課長は、職員の聴取を始めたのは7月ごろで、5月の段階で担当職員に聴取しないまま知事に報告したと明言。「私の方で推論した」と説明した。
 川勝知事は5月の会見で、推論の報告に基づき「(カラーの文書だと)気が付かなかったそうです」と答えていた。
 不自然な同課の説明に対して、川勝知事は現在も「(同課の)職員を全面的に信頼している」と疑問視していない。ある県関係者は「知事は追加調査を指示していない。調査を終わらせようとした」と述べ、ずさんな調査を知事が追認した可能性を指摘している。
 (社会部・大橋弘典)

「隠蔽に該当」複数の専門家 詳細調査の必要性指摘
 熱海土石流の文書の開示作業を担当した県職員が複写機の設定を変更してカラーの文書を白黒で判読できない状態にした行為について、複数の専門家は取材に「隠蔽(いんぺい)」とする見解を示し、組織的関与の有無を含む詳細な調査の必要性を指摘している。
 県情報公開条例に基づく文書開示手続きは元の文書がカラーの場合はカラーで開示するのが通例で、開示作業を担当する職員もこの点は認識していた。庁内調査は不十分で、カラーの文書をなぜ高濃度の白黒にあえて変えて開示・公表したのかは不透明なままだ。
 財務省の文書書き換え問題などを追及したNPO法人情報公開クリアリングハウス(東京都)の三木由希子理事長は「判読できなければ開示していないのと同じなので、隠蔽と言われても仕方ない。県は大きな問題としてとらえるべきだ」と批判。静岡市情報公開審査会委員を務めた県立大の前山亮吉教授(政治学)は「文書の加工、隠蔽に明白に該当する。職員2人が独断で設定変更したことは考えにくい」とした上で「職員個人の責任追及は『トカゲのしっぽ切り』につながり、問題の本質的な解決にならない。(文書開示と訴訟の両方を担当する)法務課の在り方を含め詳細な調査が必要だ」と述べた。

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