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複雑な地震解明に期待 平田直東京大名誉教授【提言・減災】

 石川県能登地方では、2020年12月から地震活動が活発化し、23年5月5日にはマグニチュード(M)6・5の地震が発生した。12月に入ってM6・5の地震後の活発な活動が収まったが、20年からの地震活動は今でも継続している。地震活動がこのように長期間続くことは珍しい。

平田直氏
平田直氏

 地震には、一度大きな地震が発生すると、その周辺に力が加わり、引き続き中小の地震が時空間的に群れを成して発生する性質がある。群れを成す地震活動の典型的な例は本震-余震だ。大きな地震が起きるとほぼ例外なく余震が起きる。また、最初に発生した地震より大きな地震が起き、その後に余震が続くこともある。これは、前震-本震-余震の活動である。16年4月に熊本で起きた地震がその例だ。一方、明確な本震がなく同程度の大きさの地震が長期間発生する場合もある。群発地震活動と呼ばれ、能登地方の地震がこれに当たる。
 群発地震は、地震活動域の外部から力が加わることで地震活動が継続する現象。例えば、火山活動による地下のマグマの移動が要因となる。また、プレート境界でゆっくりとした滑りが起きると群発地震が発生することもある。いずれも物質の移動に伴って力が加わり続けるためだ。
 能登地方の地震活動は、第四紀の火山からもプレート境界からも遠く、その原因が不明であった。一方、地震活動と同時に地殻が隆起・膨張するような変動も観測されている。これらのことから、地下深部から水などの流体が上昇することで、群発地震が継続している可能性が指摘された。流体が移動すると周辺に力が加わったり、流体によって岩石が滑りやすくなったりして地震が発生する。この流体は地下数百キロメートルに沈み込んだ太平洋プレートから上昇してきた可能性もある。しかし、地震活動は複雑で、その実態はまだまだ解明されていない。能登地方のような不思議な地震活動を理解することは、内陸の大地震がどこで、いつ起きるのかを予測するためにも重要である。今後の研究に期待したい。

 ひらた・なおし 東京大名誉教授。同大地震研究所長などを歴任。政府の地震調査研究推進本部・地震調査委員長、気象庁の南海トラフ地震に関する評価検討会長を務める。巨大地震の解明や被災した都市機能の回復の研究、防災教育の普及に取り組む。専門は地震学、地震防災。69歳。

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