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熱海土石流の判読不能文書 濃度上げ白黒化「意図的」 記者立ち会い再現実験で静岡県認める

 熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡りカラー行政文書を静岡県が不適切に開示した問題で、判読できなくなっていた白黒の開示文書は複写機で濃度を引き上げて作成された可能性が高いことが27日までの県の再現実験で分かった。川勝平太知事はこれまで「(文書を複写した職員は)特殊な処理は行っていない」と説明し濃度設定に言及していなかったが、県の調査担当者は再現実験を踏まえ、職員が意図的に白黒化や濃度の引き上げをしたと認定した。
 再現実験は24日に県熱海土木事務所で行われ、記者が立ち会った。複写機で元のカラー文書を1度白黒コピーした上で、スキャナーの「白黒・文字モード」に設定して濃度を3段階引き上げて白黒コピーした文書を読み込むと、盛り土を規制する砂防指定地の標識が写った写真部分が、当初の白黒開示文書とほぼ同じ判読不能な状態になった。
 また、県によると、文書を開示する際にペンで非開示箇所を黒塗りした文書の「原本」が再現実験の直前に見つかった。「原本」のペンの濃度は薄く、黒塗りが透けてしまう状態だったが、再現実験では、別のペンで黒塗りすると、濃度を同様に引き上げなくても透けなくなった。
 文書問題を調査している内藤信一総務局長は、濃度を引き上げて開示文書が作成されたことが再現実験で裏付けられたとした上で「(開示を担当した)職員にヒアリングしたところ、黒塗り箇所が透けるのを防ぐために『いろいろやった』と言っている」と強調した。ヒアリングの詳細は明らかにしなかった。
 複数の県関係者は取材に「外部に出す文書を複製する際、濃度を上げるような方法は取らない」「濃度を上げなくても黒塗りが透けるのを防ぐ方法はある」などと話し、開示担当職員の説明内容を疑問視した。
 (社会部・大橋弘典)複写機で判読できなくなった行政文書の再現実験をする調査担当の県職員=24日、熱海市の県熱海土木事務所
 熱海土石流の県行政文書不適切開示問題 土石流起点付近の分水嶺(れい)の開発状況を記載した行政対応文書が判読できなくなったり、非開示にする必要のない部分まで黒塗りされたりして報道機関などに提供された問題。県はカラー文書を白黒化したほか、既に解散した違法開発業者の利益を保護する理由で無許可開発した範囲を非開示にしたり、集水用の浸透枡とみられる穴が過去にあった場所の図面を黒塗りにしたりしていた。これらの行為で伏せられた情報は第三者検証されていない。

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