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静岡県職員、複写機設定変更認める 熱海土石流巡る開示文書の判読不能問題

 熱海市伊豆山で盛り土が崩落し28人が死亡した大規模土石流を巡り、静岡県が開示した行政文書の一部が読み取れなくなっていた問題で、発災直後に文書の開示作業を担当した法務文書課(現法務課)の職員2人が県の調査に対し、複写機の通常設定を白黒で濃度が濃くなる設定に意図的に変更し、元のカラー文書から白黒の開示文書を作成したと認めていることが4日までの県への取材で分かった。県法務課は「(職員2人の対応を)不適切だった」と認め、「被災者や開示請求者に申し訳ない」と陳謝した。職員の独断かは分かっておらず、組織的な関与の有無が今後の調査の焦点になる。
県職員が複写機で白黒化する前の行政文書の一部。無許可開発区域の「雨水流出部」の状況がカラー写真で分かる
法務課「対応は不適切」
 同課によると、2021年度の情報公開班の職員2人に今年7月上旬、当時の経緯を聞き、2人とも複写機の設定変更を認めたという。同課の説明では、文書を保管する各課から提出されたカラーの行政文書を課内の複写機で電子化(スキャン)した際、白黒で濃度の濃くなる設定「白黒・文字モード」に変更。職員2人のパソコンにデータを送り、そのデータを印刷した白黒文書を開示した。その結果、崩落部付近の開発状況や川の水の濁りを撮ったカラー写真などが黒く塗りつぶされた状態になった。
県職員が複写機で作業した後に開示された行政文書の一部。濃度が変わり、何が写っているのか分からない
 設定を変えた理由に関して職員は、ペンで黒塗りにした県職員名や業者名の非開示箇所が透けて見えないようにするためだったと説明しているという。一方、県が行政文書を開示する際はカラーの文書はカラーで開示するのが通例。カラー文書を白黒で電子化した理由は分かっておらず、職員の説明に不自然な点が残っているため、県は引き続き事情を聴く方針。2人の職員の独断か、指示があったのかも焦点で、県は調査結果を踏まえて関係した職員の処分を検討する。
 熱海土石流を巡っては、県による情報の出し渋りで検証作業や訴訟の進行に遅れが生じ、被災者から対応を批判する声が上がっている。森隆史法務課長は取材に「やった(開示作業をした)人も悪いし、チェックした人も悪い。組織としての失敗だ」と述べた。
 (社会部・大橋弘典)

県がカラー文書を判読できない白黒文書にした流れ

 熱海土石流を巡る県の行政文書の白黒コピー問題 土石流の起点付近の開発行為に関し、業者に対する指導内容などを記録したカラーの行政文書が白黒化され、写真などが黒く塗りつぶされた状態で開示・公表されていた。川勝平太知事は、カラーの文書と知らずに白黒コピーした結果、判読できなくなった-と説明していたが、通常の設定でそのまま白黒コピーすれば判読できることが確認されると、県側が説明を変えた経緯がある。専門家は濃度などを変えて文書が加工された可能性があるとし、県による隠蔽(いんぺい)の疑いを指摘していた。

 

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