テーマ : 熱海市

分水嶺またぎ盛り土か 崩落起点 開発影響し水流入?【熱海土石流】

 熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流を巡り、起点の盛り土が隣接流域との分水嶺(れい)をまたいで造成されたとみられることが4日までの専門家への取材や行政文書の分析で分かった。発生直後の静岡県のドローン映像に分水嶺付近の盛り土が水を含んで上部から崩れる様子も映っており、分水嶺の開発行為の影響で隣接流域から崩落地に水が流入して盛り土の崩落につながった可能性が浮上した。

水を含んで崩落する盛り土とみられる土砂(赤点線)=2021年7月4日、熱海市伊豆山(県提供のドローン映像から抜粋し加筆)
水を含んで崩落する盛り土とみられる土砂(赤点線)=2021年7月4日、熱海市伊豆山(県提供のドローン映像から抜粋し加筆)
熱海市伊豆山の土石流起点の開発状況
熱海市伊豆山の土石流起点の開発状況
水を含んで崩落する盛り土とみられる土砂(赤点線)=2021年7月4日、熱海市伊豆山(県提供のドローン映像から抜粋し加筆)
熱海市伊豆山の土石流起点の開発状況

 県が発生後に起点北側で実施した地質調査では、地下6メートルを境に地層が変化していた。6メートルより浅い地層は約6万年前に隣接する鳴沢川最上流の山で起きた大規模崩壊の堆積物とする見方もあるが、県議会で参考人として証言した地質専門家の塩坂邦雄氏は地質調査結果に「玉石が点在している」と記されていることに着目。「大規模崩壊であれば泥流になるので玉石は含まれない。崩壊後に鳴沢川の川筋でできた玉石が開発時に入り込んだのではないか」として浅い地層は盛り土の可能性が高いとみる。
 県が土石流発生翌日の2021年7月4日に逢初(あいぞめ)川源頭部を撮影したドローン映像には、落ち残った分水嶺付近の盛り土の一部が水分を含んで崩落する様子が映っていた。地質調査時の地下水位データからも、浅い地層は水をためやすい帯水層と推定される。
 また、03年2月7日の行政文書には、分水嶺付近の違法開発地に土採取場があり、切り土(地山を掘削)したと記されている。塩坂氏によると、行政文書の記載や写真、図面を踏まえると切り土した後に盛り土した可能性がある。分水嶺をまたいだ盛り土と地山の間に水の通り道ができたり、盛り土内に水が浸透したりして左岸側盛り土の崩落につながったと考えられるという。
 (社会部・大橋弘典)
起点北側の調査箇所 県「盛り土ではない」  県は、起点北側の地質調査の結果から「(分水嶺付近の浅い地層は)盛り土ではない」と主張し、崩落地に湧き出る地下水は分水嶺の地下深くを通って隣接流域から流れ込んだと説明。分水嶺の開発行為と土石流の関連を否定している。
 盛り土でないと考える理由として、分水嶺付近で調査した浅い地層にコンクリート片や木片が混入していないことを挙げている。ただ、県の発生原因調査検証委員会で浅い地層の部分は議論されていない。

いい茶0

熱海市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞