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森町三倉地区 山林保全へ理解促進 電動MTBツアー 森を学び 森を駆ける【わたしの街から】

 森町の中心街を越え、太田川の支流「三倉川」に沿って北上すると、広大な森林に囲まれた歴史ある山里へとたどり着く。かつて戦国時代には徳川軍と武田軍の攻防が繰り広げられ、江戸時代には長野県南部と静岡県西部を結ぶ秋葉街道の宿場町として知られた森町三倉地区。古くから農林業を中心として栄えてきた同地区の山林の一部は、2017年にFSC森林認証を取得。林業関係者らが、環境に配慮された木材の需要拡大へ奮闘している。
FSC認証を受けた森林を巡るツアー
 11月下旬。数十台の電動アシスト付きマウンテンバイク(E-MTB)が、澄み切った空気と温かな木漏れ日が心地よい三倉地区の林道の風を切っていた。
 適切な森林管理の国際基準「FSC認証」を受けた同地区の森林内を走行するツアー。同地区の森町森林組合や、掛川市森林組合などで構成する「遠州森林認証グループ」が同認証の理解促進を目的に企画した。森町森林組合を発着点に約6時間かけて林道を巡る全長32キロのコースを、同組合森林計画課長の村山英人さん(43)が案内し、認証林や林業の現場を参加者に紹介した。
MTB専用施設「ミリオンペタルバイクパーク」
 一行は最初に昨年整備した現場に立ち寄った。FSC認証取得のためには、伐採量の計画的な管理や生息する生き物たちのすみかの保護などが必要であることを解説。後世に豊かな森林を残すためには、環境に配慮した持続可能な森林管理をする山林所有者が増えることが重要だと明かした。
 貯木現場では「認証材」である丸太を実際に観察した。認証を受けた森林の木材などから作られる製品にはFSCロゴマークが付けられる。村山さんは「消費者がFSC認証製品を求めてくれることで企業の意識が向上し、やがて山林所有者も環境保護に積極的になればFSC認証製品が増える。循環の輪が、世界全体の森林保全へつながる」と呼びかけた。

記者も体験「気分爽快」
木漏れ日の差す認証林を進む
 ツアー折り返し地点は、認証林の保護や活用を目的に2022年にオープンしたMTB専用施設「ミリオンペタルバイクパーク」。初心者向けや本格的なコースが用意され、森林を間近に感じながらMTBを楽しめる。記者は初めてE-MTBにまたがり、野山を駆ける爽快感を味わった。
 MTBの基本姿勢はいわゆる「立ち乗り」。コースは起伏が激しい悪路でバランス感覚が重要だが、中高生時代にハンドボールで鍛えた体幹が功を奏した。ただブレーキの力がかなり強く、感覚をつかむには経験を積む必要がありそうだ。
 想像をはるかに上回ったのは電動アシストの強さ。オフロードの急勾配を座ったまま軽々と進む。試乗したバイクは販売価格約72万円の最新機種-。新たな趣味となっても、しばらくは太ももを酷使しながら人力で楽しみたい。

許禰神社 家康直筆の短冊
中心部にある許禰神社
 三倉地区中心部にある許禰(きね)神社。かつては三倉の中でも山深い北部地域にあったが、1915年に現在の場所に遷座した。
 創建の年代は明らかではないが、平安時代の法令集「延喜式」にも記述のある歴史ある神社。徳川家康が贈ったとされる「天下和平不生禍乱(天下太平の願い)」の短冊がまつられ、境内にはこれを写した遷座100周年の記念石碑が建立されている。毎年10月下旬には「許禰神社例祭」が執り行われ、地区内の4町が二輪屋台を引き回す。
森町 三倉地区
(袋井支局・北井寛人) 

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