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記者コラム「清流」 「失敗」は繰り返される

 「行政の失敗」。この言葉が以前から引っかかっていた。熱海市で2021年に起きた盛り土崩落に伴う土石流を巡り、県の対応を十分に検証しなかった第三者委員会が総括した文言だ。総括を受けて記者会見した当時の難波喬司副知事(現静岡市長)は「失敗」を認めたものの、法的な不作為はないと強調した。
 第三者委の意図は不明だが、「失敗は成功のもと」とミスを正当化する際にも使われ、再発防止の意味が薄まる言葉の引用に違和感を持った。責任を問われない行政職員に緊張感は生まれず、盛り土災害の「失敗」は繰り返されている。
 責任を全面的に認めた心からの謝罪には、遺族や被災者のストレスを和らげる効果もある。法的責任を認められない行政に、盛り土災害の遺族や被災者は今も苦しめられている。
(社会部・大橋弘典)

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