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社説(1月29日)共産委員長が交代 党勢後退 問われる手腕

 共産党の第29回党大会が熱海市内で開かれ、歴代最長の23年にわたって委員長を務めた志位和夫氏が退任し、後任に田村智子氏が就く人事を決めた。女性の委員長就任は初。世代交代と女性の活躍を印象付ける人事と言えよう。党員の減少や高齢化、党財政を支える機関誌「しんぶん赤旗」の購読者減など党勢の後退が指摘されている。この難局を打開することができるのか、新委員長の手腕が問われる。
 派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、自民党が国民の批判にさらされ、最近の世論調査では岸田文雄内閣も自民も支持率を著しく下げている。ところが、自民には「政権を失うかもしれない」との危機感が薄い。「自民が鈍感だから」とばかりは言えまい。日本の国政で“1強多弱”の状況が続き、自民への逆風の中でも野党の支持がそれほど高まっていないことが大きい。野党が裏金事件に憤る国民の十分な受け皿になり得ていない。この責任を、共産も野党の一角として自覚しなければならない。
 共産は昨年の統一地方選で、その4年前に比べ大幅に議席を減らす大敗を喫した。道府県議選と政令市議選はそれぞれ22議席減。県議会議席のない空白県は1から静岡県を含む5に増えた。より有権者に近い地方議会で党の存在感が低下すれば、国政選挙にもマイナスになるのは当然だ。党勢回復を目指すなら、地方の体制強化は急務だろう。
 共産は2015年の安全保障法制を巡り、独自路線から野党共闘に転じた。違憲としている自衛隊を当面は認め、有事の際には活用する姿勢を示すなど、国民に受け入れられやすい現実路線への転換も図った。参院選1人区や衆院選小選挙区で野党候補の一本化につなげる成果があったものの、自民などから「野合批判」を受けたこともあり、共闘の機運はしぼんでいる。
 他の野党が共産との共闘に及び腰な原因の一つは、外交や安全保障など共産党の政策に対する警戒感だ。野党共闘の推進に向け、今後、そうした警戒感が払拭されるか注目される。
 昨年、党首公選制導入を主張する書籍を出版した元党職員らを除名したことが、共産の「閉鎖的な体質」を示していると批判を浴びた。共産は批判は当たらないと反発する。党大会で地方議員が除名を問題視する意見を述べたのに対し、田村氏は、党外の声に依拠した意見だとして「党員としての主体性、誠実さを欠く発言」と叱責[しっせき]した。だが、無党派層など党外に支持を広げることができなければ党勢の回復などできまい。そのためには党外からの批判に、真摯[しんし]に耳を傾ける姿勢が求められるのではないか。

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