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社説(2月27日)力士の暴力根絶 より強い危機感必要だ

 大相撲の世界でまた暴力問題が発覚した。幕内の北青鵬が1年以上にわたって後輩力士2人に暴力を振るっていたとして日本相撲協会は師匠の宮城野親方(元横綱白鵬)に監督義務違反などで2階級降格と減俸の処分を言い渡した。北青鵬は引退した。
 史上最多の優勝45回を誇る元大横綱の部屋で将来を嘱望されていた大器が起こした不祥事だけに、落胆したファンは少なくない。日本相撲協会が2018年に「いかなる暴力も許さない」と暴力決別宣言し、厳罰化を図った後も、暴力行為は何度も明るみに出ていた。暴力体質は根深いと言わざるを得ない。
 相撲部屋の兄弟子が弟弟子へ暴力を働いているケースがほとんど。立場を利用したパワーハラスメントに社会の目は厳しさを増している。暴力も指導の一つという古い考えは今では通用しない。
 今後も暴力が繰り返されれば、深刻化している新弟子の減少に拍車がかかる懸念もある。全ての親方、力士が自らの問題として深刻に受け止め、より強い危機感を持たない限り暴力は根絶できない。
 07年に時津風部屋で起きた力士暴行死事件は、親方と兄弟子3人が逮捕され、社会に衝撃を与えた。17年には横綱日馬富士が酒席で若手力士に暴行を加え、引退に追い込まれた。暴力決別宣言の後も暴力絡みの不祥事による力士の引退や親方への処分が後を絶たない。親方の弟子への暴力、暴言が分かり相撲部屋が閉鎖になった例もある。
 身長2メートルを超える22歳の北青鵬は、熱海富士(熱海市出身)や大の里、伯桜鵬らとともに今後の角界を担う逸材に挙げられていたが、相撲人生を棒に振ることになった。暴力の中身は悪質で陰湿。言い逃れはできない。弟子の横暴を見逃してきた宮城野親方の責任も極めて重い。厳しい処分を受けるのは当然だ。
 昨年の新弟子検査合格者は年6場所となった1958年以降では最少の53人。力士の総数は45年ぶりに600人を切り、「若貴ブーム」にわいた90年代前半の3分の2以下まで減った。入門者減少の要因は少子化やプロスポーツの多様化だけだろうか。暴力体質が敬遠されているのではと指摘されても仕方がない。
 大相撲は昨年来、白熱する優勝争いや相次ぐ新大関の誕生、若手の台頭などで人気は高まっている。新弟子の増加につながるとも期待された。暴力行為は相撲ファンへの裏切りでもある。
 日本相撲協会は税制面で優遇措置を受けている公益財団法人であることを忘れてはならない。不祥事があれば外部からの批判は免れない。親方と力士の意識改革の徹底が何よりも求められる。

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