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大自在(11月15日)番付表

 最下段の序ノ口力士の文字は、2ミリもない。大相撲九州場所の番付表を手に取った。肉眼で探すのも大変だが、西序ノ口14枚目のところに安青錦[あおにしき]。その上に片仮名で出身地が書いてある。
 19歳の安青錦は、十両獅司に次いで2人目のウクライナ出身。ロシアによるウクライナ侵攻後の昨年4月に日本に避難してきた。国際大会で知り合った関西大相撲部主将(当時)の山中新大[あらた]さんを頼って避難生活と稽古を続け、安治川部屋に入門した。
 元関脇安美錦の安治川親方は、伊勢ケ浜部屋の部屋付き時代には翠富士(焼津市出身)や熱海富士(熱海市出身)らを鍛えた。早稲田大学大学院でも学び、異文化交流で相撲の魅力を発信したいという考えを持つ。外国人力士が活躍しやすい環境といえるだろう。
 ウクライナの相撲熱は高い。同国連盟の登録者は約300人とされるが、先月東京で行われた世界選手権では、男女10階級のうち7階級を制した。同時開催された世界ジュニアの男子重量級に出場した16歳のエゴール・チュグンさんは長崎県の高校への留学が決まるなど若手も育っている。
 番付表は、相撲大事典(現代書館)によれば「縦110センチ×横80センチのケント紙に書かれた『元書き』を4分の1に縮小印刷」したもの。最高位の横綱の文字が一番大きく1・5センチほどで、下位になるほど小さくなる。最も文字の小さな序ノ口は、角界では「虫眼鏡」と呼ばれる。
 きのうの3日目でデビューから2連勝とした安青錦。早く番付表の文字を大きくして、戦禍の故郷に勇気を与えてほしい。

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