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大自在(3月19日)家康とワサビ

 ワサビの花が盛りと聞いて先日、栽培発祥の地、静岡市葵区有東木[うとうぎ]を訪ねた。車を止めると、真上からウグイスの声。地元の女性たちが切り盛りする地場産品販売所「うつろぎ」のそばの定食にはワサビの葉の天ぷらも添えられていた。
 駿府に隠居した徳川家康が安倍川上流の有東木から献上されたワサビを気に入って、門外不出のご法度品に。8代将軍吉宗のころ、シイタケの栽培指導に訪れた板垣勘四郎が苗を持ち帰り、伊豆がワサビの一大産地になった。
 山根京子岐阜大准教授の著書「わさびの日本史」に、家康とワサビの出会いは「奇跡」とある。家康の後、将軍の献立に頻繁にワサビが登場するようになり、朝鮮通信使の一行をもてなすだけのワサビを調達できたのも近隣で栽培されていたからと。
 家康は、ワサビの地位向上のきっかけをつくった和食文化の功績者。すし、刺し身、そば、そして肉料理にも。安定供給できるのは、農産物だから。「静岡水わさびの伝統栽培」が世界農業遺産に認定されて今月で5年たった。
 本県はワサビ生産日本一。ワサビは氷河期以降に日本海側の気候に適応して進化したとされるので、静岡ワサビの今があるのは偶然と努力のたまものと言える。さらに、有東木発祥の栽培ワサビのルーツを「甲斐の国方面(武田領)」とみる山根氏の仮説は興味深い。
 ワサビには高度な栽培技術が必要だが、都内の農業ベンチャーが人工知能(AI)など最先端技術を使って焼津市でチャレンジするという。どこまで「農芸品」に迫れるか、注目したい。

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