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下流域被害まで1時間半 証言や専門家分析で判明 熱海土石流

 2021年7月3日に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流は、上流域で発生を知らせる第一報の後、下流域に被害が及ぶまで約1時間半かかっていたことが25日までに、専門家の分析や住民の証言などで分かった。

上流域の第一報から下流域に被害が及ぶまでに1時間半ほどかかった土石流。全壊家屋の数メートル隣で無傷の建物が立っているケースも散見される=2021年7月5日、熱海市伊豆山(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
上流域の第一報から下流域に被害が及ぶまでに1時間半ほどかかった土石流。全壊家屋の数メートル隣で無傷の建物が立っているケースも散見される=2021年7月5日、熱海市伊豆山(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
2021年7月3日の熱海土石流の経過
2021年7月3日の熱海土石流の経過
上流域の第一報から下流域に被害が及ぶまでに1時間半ほどかかった土石流。全壊家屋の数メートル隣で無傷の建物が立っているケースも散見される=2021年7月5日、熱海市伊豆山(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
2021年7月3日の熱海土石流の経過

 下流域の住民ほど避難する時間があった可能性がある一方、「土石流に気が付かなかった」との証言も多い。専門家は「避難すべき人がリスクを確信できなければ時間的猶予に意味はない」と指摘し、特に土砂災害警戒区域は上流の異変を下流の住民が察知できる仕組みが必要だと提言する。
 京都大防災研究所の竹林洋史准教授(砂防工学)は伊豆山の住民が撮影した動画や証言、地形データなどから土石流の過程を分析し、少なくとも第一報から土石流が収まるまでに土砂の波が8回あったことを確認した。
 国土地理院によると、盛り土の崩落起点から土砂が到着した伊豆山港までの約2キロの地形は、11度の勾配でほぼ一定となっている。土石流は一般的に勾配が緩やかであれば流れ続けるが、発生の第一報があった午前10時28分の直後、約1・3キロ下流の市道伊豆山神社線の手前で土砂はいったん止まった。
 竹林准教授は上流域の建物が土砂をせき止め、一時的に砂防ダムのような状態になったと解説する。そこに後続の土砂がたまって建物を破壊し、10時55分ごろ再び流れ下ったとみられる。市道沿いの赤い建物に土砂の波が猛スピードで襲いかかる様子がこの時に撮影され、交流サイト(SNS)で広がった。
 土石流はその後、再び中流域の建物にせき止められながら堆積と流出を繰り返し、がれきを巻き込むことで威力を増した。午前11時15分ごろに約1・7キロの新幹線ガード付近に到達。正午ごろには国道135号の逢初(あいぞめ)橋付近の建物を破壊し、住民が死亡した。
 逢初川に沿って流れた土石流の幅は約120メートル。被災現場では川沿いの家屋はほぼ全壊したが、数メートル離れた場所では無傷の建物が立っているケースも散見された。
 竹林准教授は「土石流に対して直角方向に20~30メートル動くだけで避難できた。起点の盛り土にセンサーを付けてサイレンがなるような仕組みがあれば、下流の住民は早く気づき助かったかもしれない」とみる。その上で「土砂災害の危険性がある場所には、住民が避難する動機となるシステムが必要。地域の特徴と災害リスクを踏まえた避難行動を考えなければいけない」と強調した。

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