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熱海土石流 軽視できぬ長時間雨量 静岡大防災総合センター教授・副センター長 牛山素行氏

 7月3日に熱海市伊豆山地区で発生した土砂災害では、死亡・行方不明が27人に上った。県内の自然災害でこれを上回る人的被害の発生は、1974(昭和49)年7月の「七夕豪雨」(死者・行方不明者44人)までさかのぼる。本当に痛ましいことが起きてしまった。

牛山素行氏
牛山素行氏

 この災害の要因として「盛り土」の問題が指摘されている。県は災害発生直後から盛り土関連をはじめ、詳細な情報を積極的に公開している。筆者は土石流などの土砂移動現象のメカニズムについては詳しくないが、これまでの県による説明に特に不合理な点は感じていない。情報を迅速・積極的に公開したことは高く評価される。
 一方、県自身も指摘しているように、この災害も他の災害同様、さまざまな要因の組み合わせで発生したと考えられることが重要だと思う。
 まず、引き金は「大雨」だろう。1時間など短時間の降水量は激しくなかったが、72時間などの長時間の降水量は、少なくとも最近十数年間では最も大きな値が記録された。軽視できる規模の大雨とは言えない。土石流が流れ下った場所が、過去繰り返し土石流が流れて形成された地形であり、勾配も急で、地形的に土砂災害が生じ得る場所だった事も要因と言えるだろう。
 ハザードマップでも今回、家屋流失などの大きな被害が出た範囲は土砂災害警戒区域と示されていた。また、こうした場所に集落が広がっていったことも潜在的な要因の一つと考えられる。このような地形や集落は決して特殊なものではなく、全国各地に数多く存在する。他にも気象情報や避難情報に関わる要因もあるかもしれない。
 これらのどれが、どの程度の影響をもたらしたかを評価することは極めて困難と思われるが、さまざまな要因が存在していたとは言えよう。無論「盛り土」の問題を軽視すべきではない。それとともに、自然災害にはさまざまな要因が作用しており、そうした要因は私たちの身近なところにも存在することに、目を向けておくことが重要だ。

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