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心の傷、置き去りにしない 熱海土石流 専門チームがケア ストレス寄り添い傾聴

 熱海市伊豆山で発生した大規模な土石流により、被災者や遺族は大きな衝撃と悲しみを受けている。行方不明者の捜索や被災者の対応に当たる支援者もさまざまなストレスを抱えやすい状況。精神的に傷ついた人々のケアを図るため、静岡DPAT(災害派遣精神医療チーム)や日本赤十字社県支部、日本DMORT(災害死亡者家族支援チーム)が避難所などで寄り添う支援を続けている。

被災者らの心のケアに向けて打ち合わせに臨む医師や看護師ら=13日、熱海市内(静岡DPAT提供)
被災者らの心のケアに向けて打ち合わせに臨む医師や看護師ら=13日、熱海市内(静岡DPAT提供)

 「被災した現場を思い出してつらい」「眠れずイライラする」。大切な人や家を失った被災者からは毎日、医師や看護師らに切実な声が届く。家屋をものすごい勢いで押し流していった土石流の映像は、被災者の脳裏から離れないという。
 静岡DPATや日本赤十字県支部のこころのケア班、日本DMORTに所属する医師や看護師らは保健師と連携を取りながら、避難所や遺体安置所などで被災者らの声に耳を傾ける。「話を遮らないように傾聴を心掛けている」と話すのは、裾野赤十字病院の杉本美穂子看護師(46)。相手の表情やしぐさを注意深く観察しながら、必要に応じて静岡DPATの医師の診察や処方につなげる。「隣にいてほしい」と求める被災者の隣で、何時間も黙って寄り添うこともある。
 静岡DPATで統括を務める県立こころの医療センターの鈴木健一医師(43)は、今回のような災害に直面すると「誰もが心を痛める。尾を引いても不思議ではない」と説明する。ストレスの反応は恐怖や孤独感、判断力の低下、睡眠障害などさまざま。被災者には「異常な状況に対する自然な反応。落ち着いた生活を続けるうちに徐々に収まっていきますよ」と伝えている。住宅確保など、現実的な公共支援につなげることもDPATの重要な役割という。
 遺体安置所の運営や被災者に対応する行政職員、捜索活動に当たる警察官らのケアも欠かせない。面談し、過重労働から休息を助言したケースも出ているという。日本DMORTの山崎達枝理事(69)は「支援者が逆に被災者になるようなことがないよう、役割を果たしたい」と話す。

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