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製造業 国内回帰の動き 日本製品 評価再浮上を【西部 記者コラム 風紋】

 楽器メーカーのヤマハ(浜松市中央区)が、国内のものづくり基盤を強化する。連結子会社で楽器・音響機器製造のヤマハミュージックマニュファクチュアリング(YMMJ、磐田市)を吸収合併すると、昨年末に発表(効力発生日は4月1日)した。
 ヤマハはこれまでの生産戦略として、コストや効率面で有利な海外工場への工程移管を積極的に進めてきた。しかし、技術・技能の分散や継承、市場変化への対応などに課題が出ていたほか、海外労務費の上昇や長引く円安なども重なり、国内回帰に方向転換した。中田卓也社長(4月1日付で取締役会長に就任)は「国内機能の強化につなげたい」と強調し、開発と生産現場の連携が同社の発展につながると期待する。
 ヤマハの楽器製造を請け負うYMMJの工場を見学した際、思った以上に手作業による工程が多い印象を受けた。アコースティック楽器の製造では、感性や高い技術力が求められ、社員が金属をハンマーでたたいたり、ヤスリで削ったりする。音の検査でも、最終的には自分の耳が頼りになってくる。
 楽器メーカーは、顧客が購入した製品の修理や検査が欠かせない。ヤマハは管楽器テクニカルアカデミー(磐田市)や、ピアノ調律師を育成するピアノテクニカルアカデミー(掛川市)を運営する。1学年で100人以上いた全盛期に比べ、現在の生徒は約10分の1程度と減少したが、楽器に関わる仕事を熱望する人は現在も少なくない。県内には調律技術を学ぶ河合楽器製作所のカワイ音楽学園(浜松市中央区)などもある。楽器づくりにおける職人の熟練の技は、県西部地区で長年に渡り受け継がれてきた。
 コロナ禍に海外供給網が混乱した経験や円安などを背景に、製造業は大手を中心に国内回帰の動きが強まっている。国内取引の活発化で新規事業創出や労働者の賃金アップを期待したい一方、深刻な人手不足などの課題もある。「ものづくりの町」として発展してきた県西部地区の企業には、人工知能(AI)など最先端の機能を活用しながら、日本製品の品質評価を再び高めることに貢献してもらいたい。
 (浜松総局・大山雄一郎)

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