テーマ : 掛川市

【時評】全国地紅茶サミット 物や人集める「コト」期待(小泊重洋/地紅茶学会顧問)

 昨年12月2、3の両日に岐阜市で第21回全国地紅茶サミットが開かれた。全国から大勢の紅茶愛好家や生産農家が集まった。

小泊重洋氏
小泊重洋氏

 この会は毎回、開催地の有志が組織を立ち上げて運営する。今回、最初に中心となっていた女性が不幸にして途中で亡くなる事態が生じ、開催が危ぶまれた。しかし、後を受けた女性はSNSを最大限活用して事前の情報発信やオンラインセミナー、会場からのインスタライブなど時代にマッチした運営を行った。さらに長良川、紅葉の金華山、岐阜城を一望するパノラマ茶会を催すなどして大好評のうちに終えることができた。
 このように運営がすべて開催地に任される。また、全国の生産者が自慢の紅茶を持ち寄り出店する市[いち]の機能も大きな特徴である。一昨年の南九州大会では2万4000人の参加者があったという。ただ、規模の大小を気にすることなく、うちはうちという考え方で地域にあったもてなしがなされる。主催者と参加者の一体感を感じる。
 今年は11月上旬に長崎県の離島対馬市で予定される。ご当地で紅茶生産農家は、知る限り1軒のみである。どのような会が催されるのか、多くの関心が集まっている。
 最近、茶業の流れは明らかに変わった。国や県の指示待ちは過去のこととなり、個の時代に移った。既存のシステムから脱し、自分たちで問題を解決していかなければならない。
 まずは個をいかに表に出すか、軽トラ市のように市を立て、それに参加することである。物や人が集まる市が重要になる。地紅茶サミット開催地は、ほとんどが翌年も名前を変えて継続している。市の重要性を認識したからである。物や人を集めるには、コトを起こさねばならない。地紅茶の「地」には地域社会、地域経済、地域産業の活性化を図る意図が含まれている。
 来年は島田市で第23回地紅茶サミットが開かれる。それに先立ち、独自にプレイベントが計画された。10人ほどの若手生産者で第1回島田地紅茶フェスティバル(2月18日、島田市夢づくり会館)を開く。
 新たな試みには当然、多くの困難が伴う。多忙な仕事の合間を縫ってLINE[ライン]を活用して着々と計画を進めている。今後各地でこのようなコトが起こることを期待したい。個は小さくても集まれば大きな力になる。
 昨年は「アレ」が流行したが、今年は「コト」をはやらせたい。
 (地紅茶学会顧問)

 こどまり・しげひろ 1940年、大分県生まれ。岐阜大農学部卒。県茶業試験場長、お茶の郷博物館長などを歴任。その後、静岡文化芸術大大学院で文化政策を学ぶ。日本、中国の各種茶関連団体の役員を務める。掛川市在住。

いい茶0

掛川市の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞