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年長→小1進学円滑に 学びの基盤つくる「架け橋期」 掛川市教委、指定校で接続検証 

 幼児教育施設(幼稚園・保育園・こども園など)の年長の5歳児から小学1年生の6歳児にかけての2年間は、生涯にわたる学びや生活の基盤をつくる重要な時期だ。しかし、園と小学校では施設の種類が違うため学びが連続していなかったり、過ごし方が違ったりして子どもが戸惑いを感じることがある。こうした課題の解消を目指し、義務教育の開始前後の2年間を「架け橋期」ととらえ、幼児教育施設から小学校への接続の円滑化を目指す動きが広がっている。力を入れる掛川市の事例を取材した。
接続円滑化に向けたポイント
 11月上旬、掛川市立桜木小で行われた1年花組の生活科の授業「あきのスペシャルたからものランドで、ねんちょうさんをたのしませよう」。児童は数人のグループに分かれて20分間、近くのこども園の年長児と遊ぶためのドングリや松ぼっくりを使ったおもちゃ作りに取り組んだ。その後、工作で工夫した点や活動で考えたことをシートに記入した。
園と小学校の接続を意識した1年花組の授業。児童は工作に没頭したり、友達とおもちゃを試したりした=11月上旬、掛川市立桜木小(画像の一部を加工しています)
 柔らかいマットが敷かれた生活科室にはローテーブルが並び、工作道具があらかじめ準備されていた。児童はテーブル間を自由に行き来し、ドングリに穴を開けたりテープを貼ったりして、級友と出来栄えを試しながら工作を進めた。
 掛川市内では昨年度から、幼保小の関係者や識者らが、幼児教育と学校教育それぞれの良さを取り入れた架け橋期の教育課程「かけがわ型架け橋カリキュラム」の作成を進めている。第1版には園、学校でそれぞれ目指す子どもの姿や、接続時に配慮する事項などを記入した。
 桜木小の授業は同カリキュラム開発の一環。園での経験を小学校の学びにつなげる「ジョイント活動」として、園で秋探し遊びを体験してきた1年生が、秋の特徴を捉えて仲間と工夫しながら遊びをつくり出すことなどを目標としている。
 児童が自由に動きながら関心を持った工作にすぐに取り組めるようにあえて机を低くしたり。新たにやってみたいことの想像を促すよう、教室の壁には前年の園での秋遊びの写真を貼ったり。学校の授業に園の環境設定を取り入れ、園とのつながりも意識した。
 一方で市内の幼児教育施設では、子どもが秋への興味を深められるように教室の前に木の実遊び、クイズ、書籍のコーナーを設けている。幼児期は遊びを中心に頭、心、体を動かしてさまざまな主体と関わりながら学ぶ時期との考え方に基づき、多様な体験が得られるような状況をつくるための環境の工夫だ。
 掛川市教委は本年度、同小など指定校と園で架け橋カリキュラムの検証や検討を実施。来年度以降に改良を重ね、いずれは市内の全小学校と園に広げる予定。
 (教育文化部・鈴木美晴)

全国へ実施呼びかけ
 幼保小の接続円滑化の重要性は、2017年告示の幼稚園教育要領や保育所保育指針、小学校学習指導要領などに明記された。文部科学省の諮問機関の中央教育審議会は21年に「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」を設置。審議内容をまとめた文章や動画を公開し、全国の幼児教育施設と小学校に接続を円滑にするための架け橋プログラム実施を呼びかけている。
 同省は22年度から3年間、架け橋期のカリキュラム開発や実施に取り組む全国19の自治体を採択していて、県内では掛川市のほか、袋井市も名を連ねている。

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