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掛川の歴史研究家 柴さん 家康の姫 生涯たどる 嫁ぎ先での功績 丹念調査

 80歳を機に都内から掛川市に移住した歴史研究家柴桂子さん(86)=同市本郷=が、徳川家康の娘や養女の人生を追った著書「徳川家康三十二人の姫君の結婚―もう一つの大名統制」(みらいま)を出版した。それぞれの生い立ちや功績をたどり、政略結婚の背景をひもといた。

徳川家康の姫に焦点を当てた本を出版した柴さん=掛川市本郷
徳川家康の姫に焦点を当てた本を出版した柴さん=掛川市本郷


 柴さんは日本近世史と女性史が専門。家康が迎えた養女の多さに着眼し、嫁ぎ先の大名家の家譜や軍記物などを丹念に調べて結婚後の養女の記録を掘り起こした。文献に登場する女性の多くは名前が判明せず、政略結婚と子どもを産むためだけの存在として扱われていることに強い違和感があったという。
 著書で浮かび上がらせたのは、しっかりした意思を持ち幕藩体制の基礎固めに貢献した姫たちの姿。織田信長の命令で新城城主奥平信昌に嫁いだ家康の長女亀姫について、奥平家の存続のために幼い孫を守って奔走した様子を紹介した。養女として真田信之のもとにこし入れした本多忠勝の娘の小松姫の項目では、大坂の陣に加わった息子を気遣う母親の優しさに触れた。
 柴さんによると、戦国期の姫は戦場に出た城主らの留守を守るほか、戦況の情報収集や物資の調達など藩政で重要な役割を担っていた。「姫たちは政権に利用されたが、泣き寝入りしていたわけではない。藩の内政や交流で生き生きと躍動していた。同時に、計算して嫁がせた家康のすごさも改めて感じた」と語った。
 柴さんは各地で勉強会を主宰するほか、天竜浜名湖鉄道原谷駅の近くで交流拠点「桂庵」を運営している。
 (掛川支局・高林和徳)

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