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社説(2月29日)静岡茶の活路 「和紅茶」に注目したい

 茶の減産が止まらない。農林水産省作物統計によると、2023年の荒茶生産量は静岡など主産8府県で前年比3%減の6万8千トン(全国は推計7万5200トン)だった。コロナ禍の作業停滞や外出自粛による緑茶飲料の需要見通し減などで摘採見送りが増えた20年をも下回った。高度経済成長前の水準である。
 本県の荒茶生産量は2万7200トン。鹿児島県は2万6100トンで、辛うじて首位を守った。ただ、一番茶が前年比13・7%減だったのに二番茶以降を合わせると4・8%減と、需給シフトが瞭然だ。
 農家の高齢化や長引く茶価低迷で茶の生産基盤は弱体化に歯止めがかからない。茶業の“黄信号”に早くから気付いた茶農家や製茶問屋は、手摘み体験会やネット通販で消費者と直結したり、アイスクリームやチョコレートなどへの抹茶需要を先取りしたりして「お茶離れ」の激流にのまれないようにしている。近年、認知度が高まっている国産の「和紅茶(地紅茶)」も活路の一つとして注目したい。
 緑茶も紅茶もツバキ科の常緑樹チャから作られる。緑茶は生葉を蒸して発酵を止めるが、紅茶は生葉をしおれさせ酵素を十分に働かせる。ウーロン茶は半発酵茶だ。
 日本一の茶集散地にある静岡茶市場(静岡市葵区)も和紅茶に関心を持ち始めた。先ごろ開いた売り手と買い手の合同研修会は、専門家から緑茶とは違う紅茶の鑑定技術を学んだ。和紅茶に消費者の関心が高まる中、紅茶の目利きの力をつけ新機軸の可能性を探ろうというのだろう。この20年ほどで取扱金額が5分の1になった茶市場は生き残り戦略が急がれる。
 緑茶消費が、茶葉を急須でいれる「リーフ茶」から簡便なペットボトルの茶飲料主体になって久しい。飲料メーカーは安い原料茶を大量に求め、肥料や農薬など栽培条件も厳しい。緑茶飲料が急速に普及した20年ほど前に比べ、荒茶生産量は約2割減だが、緑茶飲料は増産基調で来た。
 煎茶は大型連休ごろ盛期になる一番茶が最も高値で取引され、二番茶は主に飲料原料やブレンド用になる。この二番茶で高値が期待できる紅茶を作る生産者もいる。
 かつては輸出向けに国内でも紅茶が生産された。1971年の紅茶輸入自由化を境に海外ブランドのティーバッグ紅茶が身近になったが、紅茶ファンの増加とともにリーフ支持者が増えてきた。この傾向は緑茶に通じる。
 紅茶の愛好者や生産農家が集う第23回地紅茶サミットが2025年、島田市で開かれる。来年は世界お茶まつりも開催される。関心の高まりを追い風に加工技術や商品力を高め未来につなげたい。

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