テーマ : お茶・茶況

抹茶の原料「碾茶」栽培拡大 生産量全国3位、個性発揮へ 問屋と連携、有機栽培も

 静岡県内で近年、抹茶原料の「碾茶(てんちゃ)」栽培が広がっている。飲料やスイーツ、健康食品など多彩な用途で需要が拡大する中、各地で専用工場の新設も進む。海外需要に応え、生産者と製茶問屋が連携して有機栽培の抹茶生産に取り組む動きも加速している。

小葉香が運営するれんが造りの碾茶製造設備。自然農法で栽培した茶葉は加工を経て輸出される=6月中旬、藤枝市岡部町
小葉香が運営するれんが造りの碾茶製造設備。自然農法で栽培した茶葉は加工を経て輸出される=6月中旬、藤枝市岡部町
生葉を蒸し、乾燥させて作った川根産碾茶(左)。粉末加工後、色鮮やかな抹茶(右)に仕上がる
生葉を蒸し、乾燥させて作った川根産碾茶(左)。粉末加工後、色鮮やかな抹茶(右)に仕上がる
小葉香が運営するれんが造りの碾茶製造設備。自然農法で栽培した茶葉は加工を経て輸出される=6月中旬、藤枝市岡部町
生葉を蒸し、乾燥させて作った川根産碾茶(左)。粉末加工後、色鮮やかな抹茶(右)に仕上がる

 県内碾茶工場の先駆けとして1989年に生まれた青羽根茶業(藤枝市岡部町)は、市内茶商に茶葉を供給する。本県主力品種のやぶきたのほか、おくみどりやさみどりといった碾茶栽培に適した品種を栽培し、香り高く色つや優れた茶作りを探求する。羽山光春代表(69)は「茶葉の蒸し方、加熱時間など試行錯誤のくり返しで奥が深い」と話す。
 碾茶は収穫前の2~3週間ほど、こもや樹脂の覆いをかけて色合いが深まった生葉を蒸し、乾燥させて作る。石臼や機械での加工を経て抹茶となる。
 国内碾茶産業は長らく、京都の宇治や愛知の西尾がけん引してきた。近年は茶道向けの抹茶需要が伸び悩む一方、アイスクリームや飲料などの用途で国内外から引き合いが強い。本県をはじめ煎茶の産地でも生産規模が拡大し、工場も次々と開業した。中でも鹿児島県は2021年に年間生産量が1千トンを突破し、国内一の生産拠点として機能している。
 高級抹茶市場では宇治の存在感が強い。本県碾茶生産量(21年)は全国3位の442トン。静岡産抹茶の個性発揮に向け、県内では有機栽培での生産・輸出への事業革新が進む。
 県内茶商や農業法人などが出資する静岡オーガニック抹茶(SOMA)=川根本町=は20年、国内最大級の有機抹茶加工施設を開業した。県内産碾茶を粉末加工し、製茶問屋のカクニ茶藤(静岡市葵区)と丸山製茶(掛川市)が輸出する仕組みで、海外の大口需要に応える。
 SOMAに碾茶を納品する藤枝市岡部町の茶工場経営の「小葉香(コバコー)」は19年、れんが造りの碾茶製造設備を新設した。無農薬、肥料は菜種など自然由来にこだわり、風通しが良い山あいの地形を生かして生産する。工場を運営する小林映雅さん(38)は「品質向上を追求し、いずれは品評会の碾茶部門に出品したい」と意欲を語る。

■東南アジア「有望な市場」 国内大手あいや 杉田社長
 過去最高を記録した2022年の緑茶輸出額218億8700万円のうち、抹茶など「粉末状のもの」は67.2%と、全体における占有率は高い。今後の抹茶輸出の動向について、国内トップクラスの抹茶メーカーあいや(愛知県西尾市)の杉田武男社長(48)は「欧米に加え、経済成長が続く東南アジアは有望な市場。菓子や健康食品の材料として、飲用だけでなく食べてもらう発想が重要」とみる。
 01年に米国に現地法人を設立して輸出に取り組み、世界で「MATCHA(マッチャ)」の認知度を高めてきた。国内各産地から碾茶を調達していて、「静岡は有機碾茶の生産拠点としての成長余地が大きい。西尾とも距離的に近く期待は強い」と語る。

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