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静岡県「茶のJ―クレジット化」へ 農家の新収入源に期待 静岡大、県立大と研究

 静岡県は静岡大、県立大と連携し、茶園の炭素貯留機能を計測して「茶のJ-クレジット化」を目指す研究に乗り出した。限定的な規模での推計ながら、すでに年間で一般家庭約1万3千戸分の炭素貯留量があると判明。今後の研究で推計値はさらに積み上がる見込みという。J-クレジットに認証されれば茶農家の新たな収入源となるため、長引く茶価低迷下の業界から注目が集まっている。

茶園の畝間の炭素貯留量を調べるため土壌を採取する県茶業研究センターの白鳥克哉上席研究員=11月中旬、菊川市
茶園の畝間の炭素貯留量を調べるため土壌を採取する県茶業研究センターの白鳥克哉上席研究員=11月中旬、菊川市
茶園1ヘクタール当たりの畝間土壌中の炭素貯留量
茶園1ヘクタール当たりの畝間土壌中の炭素貯留量
茶園の畝間の炭素貯留量を調べるため土壌を採取する県茶業研究センターの白鳥克哉上席研究員=11月中旬、菊川市
茶園1ヘクタール当たりの畝間土壌中の炭素貯留量

 県茶業研究センターが、樹齢20年と同40年の茶園で畝間土壌中の炭素貯留量を比較した結果、40年生の方が1ヘクタール当たり15トン多かった。1年間に換算すると0・7トン、二酸化炭素(CO2)換算で2・6トンと推定される。県全体の茶園面積1万3300ヘクタールに置き換えると、畝間土壌の炭素貯留量は年間約1万トン、CO2換算で3万5千トンに達する。
 畝間は茶園面積全体の約2割にすぎない。今後は残る樹冠下の調査を進め、茶園全体の推計値をまとめる。同センターの白鳥克哉上席研究員は「調査してみないと分からなかった数値で、思った以上の結果。より正確で包括的な数字の裏付けを進め、クレジット化の実現につなげたい」と意気込む。
 10月に開設した東京証券取引所のカーボン・クレジット市場では、「森林」分野は1トン当たり1万円前後の取引実績がある。県茶業会議所の伊藤智尚専務理事は「生産者の収入補塡(ほてん)とともに、業界のイメージアップにもつながる研究」と期待する。
 ただ、J-クレジットの認証には、脱炭素の手法を示す「方法論」の承認が必要となる。県では、茶園維持のために行われる「中切り」の更新期間を短縮し、炭素貯留量を増やす農法の提案を計画。農研機構や茶の主産県と連携した複数地域での検証も進め、方法論の確立を目指す。
 同センターの小林栄人センター長は「炭素貯留量を示すことで、まずは茶園の社会貢献性を可視化する。その上で、茶農家の経営に資するための研究としても成果を生み出したい」と展望する。
 (経済部・垣内健吾)

 J-クレジット制度 森林管理によるCO2吸収量や省エネルギー設備の導入、再生可能エネルギーの利用によるCO2などの排出削減量をクレジットとして国が認証する制度。2023年11月末現在、70の方法論と544件の登録プロジェクトがある。農林水産省によると、農林水産分野のプロジェクト登録は179件だが、茶業関係はないという。取引を通じ、クレジットの購入者には環境貢献企業としてのPR効果が、創出者にはコスト低減効果や売却益などの利点が生じる。

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