テーマ : お茶・茶況

有機茶生産20年、実直に 80歳竹下さん「できる限りやる」 浜松・佐久間町

 浜松市天竜区佐久間町で、有機茶の生産に約20年取り組む農家がいる。同町大井の竹下宏さん(80)は生まれ育った土地で一人、実直に農作業を続けている。有機農業ならではの苦労は多いが、地元や茶への思いを抱えながら目の前の作業に没頭する日々だ。

黙々と二番茶の収穫に取り組む竹下さん=浜松市天竜区佐久間町大井
黙々と二番茶の収穫に取り組む竹下さん=浜松市天竜区佐久間町大井

 天竜川沿いの国道152号から外れた坂道をしばらく登ると、竹下さんの茶畑が見えてくる。7月初旬、日差しが強く照らす中、竹下さんは二番茶の収穫に汗を流していた。約10キロ分の茶葉を袋に詰めると軽い足取りで茶工場に運ぶ。竹下さんは「(昔より)少しえらくなってきたけど、これしかやることはないんだよ」と笑顔で話す。
 竹下さんは約20年前、農薬や化学肥料の使用を止め、有機茶の生産に切り替えた。安全面への影響や海外で有機農業が広まっている動きを踏まえ、大きくかじを切った。最新技術に頼らない有機茶の生産は当然難しかった。茶畑の周辺に雑草はどんどん生えてくる。病害虫による炭疽(たんそ)病、もち病も発生しやすくなった。最近もまた新しい種類の雑草を見かけた。
 手間はかかるが、地元のお茶を届けたい思いは変わらない。小さい頃から見ていた田園風景を守りたい思いもある。「寒暖差が大きく、日が当たりやすい土地。香りと味の強い茶に仕上がる。できる限りやっていきたい」と話す。
 竹下さんの有機茶生産の取り組みは、地元の農業関係者に注目されている。竹下さんと6、7年関わりがあるJA遠州中央天竜営農センターの酒井洋平さん(40)は「大きな機械を使わず、昔ながらの方法で取り組んでいる貴重な人」と話す。近年の茶の消費傾向として、生産方法への関心が高まり始めた。酒井さんは「どういうストーリーで作られたのかに興味を持つ愛好家も見られる。竹下さんのような生産者は少なくなっている」と話した。
 (水窪支局・大沢諒)

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