テーマ : お茶・茶況

静岡・茶問屋 経営革新の波 個性重視、生産基盤を強化 茶工場運営も

 国内屈指の茶の集積地、静岡市で事業を営む製茶問屋の経営革新の動きが盛んだ。急須で飲むリーフ茶の市場が縮小する中、商品ブランド力を磨いたり、茶工場運営に乗り出したりして需要開拓・生産基盤強化の取り組みを重ねている。

かねはち茶園が開発した本山茶の商品。「本山神茶」は個性が評価されて販路を広げている=静岡市葵区
かねはち茶園が開発した本山茶の商品。「本山神茶」は個性が評価されて販路を広げている=静岡市葵区

 小柳津清一商店(静岡市駿河区)は近年、抹茶生産に力を注ぐ。静岡県内各地の中山間地の農家と研究を重ね、商品化した高級抹茶を2019年に「天空の抹茶」の名称で商標登録した。
 適度な苦みや明るい色合いが評価され、食品メーカーや外食産業などに販路を拡大。引き合いは強く、同社は粉末加工設備を増設して需要に応える生産体制を整えている。今後も国内外に販路を広げる構えだ。
 市内の安倍川・藁科川流域で収穫される「本山茶」。うまみや香気に定評があるが、近年は収量減・価格低迷が深刻化しており、問屋各社は消費開拓に知恵を絞る。
 1894年創業の老舗、かねはち茶園(同市葵区)は、久能山東照宮(同市駿河区)と共同開発した浅蒸し茶の商品「本山神茶」の販路を広げている。独自の焙煎(ばいせん)技術で香りやうまみを引き出し、煎茶やペットボトルで製品化した。徳川家康が本山茶を愛した故事を用いてアピールを進め、4~5月の販売数量は前年比約10倍に拡大した。鈴木篤社長は「産地の維持・発展に向け、個性が光る商品を送り出す技術を磨いていきたい」と語る。
 茶生産現場に参入する動きもある。丸福製茶(同区)は昨年、安倍川流域の大河内地区に立地する製茶工場の事業を承継した。地域の茶農家数減少や高齢化で工場の存続が困難となる中、運営を引き継いで良質な本山茶の生産態勢の継続を図る。
 有機茶を含めた一番茶を生産から焙煎加工、出荷まで一貫して手がける。茶業は生産・販売を分業する文化が色濃く、市内で新たに茶工場経営を始める問屋は少ない。伊藤麻実社長は「一からの挑戦。慣れない作業が続くが、品質を高めていきたい」と意気込む。
 (経済部・平野慧)

いい茶0

お茶・茶況の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞