テーマ : お茶・茶況

茶農家苦悩「先見えぬ」 農業担い手、止まらぬ減少 継承可能な環境づくりに支援必須

 新茶シーズンが間近に迫った3月下旬、静岡市葵区内牧の茶園に新緑の景色が広がっていた。山間地の適度な日照量と冷涼な環境が良質な茶を育む。「味は良い。できる作物は限られるが、お茶づくりには最適な土地」。地元で約50年にわたり生産を続ける牧野隆夫さん(66)は語る。

簡単に農作業ができるよう改植が進む農地=3月下旬、静岡市葵区内牧
簡単に農作業ができるよう改植が進む農地=3月下旬、静岡市葵区内牧

 組合長を務めるマルウチ茶農協では約30年前、100軒以上の農家が茶葉を出荷していた。荒茶工場を回す正組合員も「いくらでもいた」が、現在は農家が38軒、正組合員は17人に減った。「茶の単価が安くなり、農家も年を取った。後継者は出てこない」と苦しい胸の内を明かす。
 農業の担い手不足が深刻化している。農林水産省の統計によると、2010年に4万102軒だった県内の農業経営体は、20年に2万5938軒まで減少した。これに伴い荒廃農地は10年間で約1500ヘクタール増え、20年は6668ヘクタール。現時点で後継者が決まっていない農地も約9600ヘクタールに上り、今後5400ヘクタールが耕作放棄地になる可能性も各市町の調査で明らかになっている。
 「10年、15年後には自分も引退する頃。先は全く見えない」。牧野さん自身も子どもは娘のみで、多くの周辺農家と同様に後継者はいない。手間がかかる傾斜地の農作業は年齢を重ねるごとに難しくなり、10年前からは平地以外でのお茶づくりをやめた。山の茶園は荒れた状態になっているという。
 一方、平野部の農地では「改植」に取り組む。いずれ就農希望者が現れたら引き継げるよう、苗木を植え替えて乗用摘採機が入れる茶園を整える作業だ。「放置すれば地域が廃れる」と厳しい現実を見据え、「農地を継承できる環境づくりが必要。継続的な支援が不可欠だ」と政治に要望する。

いい茶0

お茶・茶況の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞