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大自在(10月25日)茶草場農法

 「里」という字は「田」と「土」でできている。田は整理された生産地の象形、土は土地神をまつるほこらの象形で「社」の元になった字だという。稲作をし、豊作に感謝する日本の暮らしを集約したような字だと思う。
 「里山」という言葉がある。耳慣れてはいても、イメージする風景はそれぞれではないだろうか。実は、1960年代に森林生態学者によって提唱された概念で、よく使われるようになったのは近年のことだとか。手元の漢和辞典に「山里」はあるが、里山はない。
 先日、「静岡の茶草場農法」の世界農業遺産認定10周年記念式典で、登録に導いた武内和彦さん(サステナビリティ学)の講演に教わった。掛川市など5市町の里山で受け継がれてきた伝統的農業システムである。
 辺り一面茶畑にするのではなく、草地を残し、自生したススキなどを秋に刈って乾燥、細断して茶畑の畝[うね]間に入れて土を肥やす。当たり前のこととしてやって来た作業が「生物多様性の維持に貢献している」と十数年前に言われた時、茶農家の皆さんはくすぐったい思いをしたのではないか。
 茶草の投入を繰り返すことで茶畑の土がよくなることは研究で分かっている。では茶の味はどうかという疑問に答えを出すことが次の課題になる。
 生物多様性に関心が高く、丹精の茶づくりとそのステージの里山の価値が分かる人が増えるよう、アピールする仕組みが求められる。人と大小動植物の共生空間である「サトヤマ」は「ツナミ」「モッタイナイ」のように、外国でも通じる日本語だそうだ。

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