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掛川・東名10人死傷20年 大事故の危険性、今も 表示板や発炎筒使われていれば…

 20年前の2003年10月19日未明、掛川市の東名高速下りの追い越し車線上で立ち往生していたトラックに後続のワゴン車が衝突し、ワゴン車に乗っていた7人が死亡、3人が重軽傷を負う事故が発生した。停止表示板や発炎筒が適切に使われていれば避けられた可能性があった。高速道路上に停止した車への追突事故はその後も後を絶たない。当時発生直後の現場に駆け付けた県警の鈴木淳一交通企画課長が取材に応じ、後方の危険回避措置の重要性を改めて強調した。

発炎筒の着火訓練を行う県警高速隊員=10月上旬、静岡市駿河区
発炎筒の着火訓練を行う県警高速隊員=10月上旬、静岡市駿河区
屋根が大きくえぐられ大破したワゴン車=2003年10月19日午前7時40分、東名下り掛川インター付近(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
屋根が大きくえぐられ大破したワゴン車=2003年10月19日午前7時40分、東名下り掛川インター付近(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
発炎筒の着火訓練を行う県警高速隊員=10月上旬、静岡市駿河区
屋根が大きくえぐられ大破したワゴン車=2003年10月19日午前7時40分、東名下り掛川インター付近(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)


 事故はまだ暗い午前4時25分ごろ発生した。掛川市上張の東名高速道下りを走行していたトラックがガードレールに接触。弾みで中央分離帯に衝突し、追い越し車線上の暗闇に止まった。ワゴン車がトラックに衝突したのは、その約12分後だった。死者7人は、県内東名の交通事故で最も多く、1979年の日本坂トンネル事故に並ぶ。
 当時、県警高速隊浜松分駐隊長だった鈴木課長は、当直責任者の電話を受けて現場に急行した。本線上に立ちこめるガソリンと血のにおい、あちこちに倒れた人、散乱した車の部品―。「交通事故の悲惨さが凝縮した現場だった。事故防止上、多くの示唆を含んでいた」と振り返る。
 高速道路上に停止する際に設置しなければならない停止表示板はトラックに積まれていなかった。発炎筒はあったが、運転手は使い方を知らなかった。その後も電話連絡に追われるなどし、後続車両への注意義務が果たされないまま“空白の12分間”が過ぎ、大事故につながった。「同じような事故が起きる可能性は今もある。高速道路で事故が起きた時にどう対応すべきか、危険性を伝え続けなければいけない」と訴える。
 亡くなったのは全員20代だった。「彼らが生きていれば今ごろ社会の中核を担っていたはず。東名を通る度に事故のことを改めて考える。あんな悲惨な事故は二度と起きてはならない」
 (社会部・吉田史弥)
2次的被害防げ 器材携帯、使い方確認を
 県警高速隊や日本自動車連盟(JAF)静岡支部は高速道路上で停止してしまった時の2次的事故防止対策として、停止表示器材や発炎筒の携帯と、緊急時に迷わず使えるよう使い方の確認を呼びかけている。
 同隊や同支部によると、故障などやむを得ず高速道路上に停車した場合は、速やかに停止表示器材を後方から進行する車両の運転手が見やすい位置(一般的には50メートル手前)に表示しなければいけない。法令上、停止した際の表示義務はあるが、携帯義務はない。新車購入時に別途オプションで付けたり、カー用品店で購入したりする必要がある。
 一方、車載が義務づけられている発炎筒は5分程度しかもたないため、停止表示器材の代わりにはならない。ただ、停止表示器材を設置する際に身の安全を守るためや、緊急的に後方車両に存在を知らせるためには有効という。高速隊の塩野裕治副隊長は「まずは停止表示器材や発炎筒が自分の車に積まれているか確認してほしい」と訴える。
 備えていても、緊急時にすぐに正しく使えなければ意味がない。JAF静岡支部の担当者は「停止表示器材や発炎筒を使ったことがない人は多いのでは。暗闇や慌てている時でもすぐに使えるよう事前に確認しておいてほしい」と願った。

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