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コロナワクチン開発にノーベル賞 カリコ氏ら2人、生理学医学

 【ストックホルム共同】スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、2023年のノーベル生理学・医学賞を「メッセンジャーRNA(mRNA)」と呼ばれる遺伝物質を使った新型コロナウイルスワクチン開発に道を開いた米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(68)とドリュー・ワイスマン教授(64)の2氏に授与すると発表した。カリコ氏はドイツのバイオ企業ビオンテックの顧問も務める。

ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まり、記者会見する米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(左)とドリュー・ワイスマン教授=2日、米東部フィラデルフィア(AP=共同)
ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まり、記者会見する米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(左)とドリュー・ワイスマン教授=2日、米東部フィラデルフィア(AP=共同)
カタリン・カリコ氏(左)とドリュー・ワイスマン氏
カタリン・カリコ氏(左)とドリュー・ワイスマン氏
2022年4月、報道各社のインタビューに応じるカタリン・カリコ氏(左)とドリュー・ワイスマン氏=東京都千代田区
2022年4月、報道各社のインタビューに応じるカタリン・カリコ氏(左)とドリュー・ワイスマン氏=東京都千代田区
ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まり、記者会見する米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(左)とドリュー・ワイスマン教授=2日、米東部フィラデルフィア(AP=共同)
カタリン・カリコ氏(左)とドリュー・ワイスマン氏
2022年4月、報道各社のインタビューに応じるカタリン・カリコ氏(左)とドリュー・ワイスマン氏=東京都千代田区

 カリコ氏らは、人工的に作ったmRNAを、炎症反応を起こさずに体内に入れられる技術を考案。この技術を基に20年、ビオンテックは新型コロナワクチンを米製薬大手ファイザーと共同開発した。米モデルナ社も、同様の仕組みを利用して新型コロナのワクチンを迅速に開発。有効性が確認され、発症や重症化を防ぐ手段として各国に普及した。
 ワクチン開発には時間がかかり、通常なら10年は必要とされる。カリコ氏らによる基礎的な技術開発の蓄積が、新型コロナ流行からわずか約1年という短期間での実用化に大きく貢献した。
 ワクチンには、ウイルスや細菌といった病原体の毒性を弱めたものなどさまざまな種類があり、病原体のmRNAを利用したワクチンは1990年代ごろから開発が進んだ。しかし、mRNAは体内で分解されやすいほか、異物とみなされて炎症などの強い免疫反応を引き起こす懸念があり、難航していた。
 カリコ氏らは2005年、mRNAを構成する物質の一部を別の物質に置き換えると炎症反応が抑えられることを発表。最大の壁を乗り越え、mRNAワクチンの実用化に道を開いた。
 mRNAを使った新型コロナワクチンを投与すると、体内でウイルスの表面にある突起状のタンパク質が作られる。これを基に抗体ができ、ウイルスが侵入してきた際に働く仕組みだ。
 この技術はマラリアやインフルエンザなど他の感染症や、がんを対象としたワクチンにも応用できる可能性があり、臨床試験が進められている。
 授賞式は12月10日にスウェーデンで開かれる。賞金1100万クローナ(約1億5千万円)が2氏に贈られる。

 ノーベル生理学・医学賞 ダイナマイトの発明で知られるアルフレド・ノーベルの遺言により1901年に始まった賞。「前年に人類に最も貢献し、生理学または医学の分野で最も重要な発見をした人」に贈るのがノーベルの遺言だが、実際は数十年前の業績で選ばれることもある。過去の受賞者や医学部の教授など世界の3千人以上に推薦を依頼し、約1年かけて受賞者を絞り込む。日本からは利根川進(87年)、山中伸弥(2012年)、大村智(15年)、大隅良典(16年)、本庶佑(18年)の5氏が選ばれた。(共同)

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