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続く中国の就職氷河期、焦る政府 若者失業率20%、社会不安要因

 【北京共同】中国の若者が深刻な就職難に直面している。新型コロナウイルス禍からの景気回復が鈍く、都市部の若者失業率は20%と最悪水準で高止まり。その中にあって、大学進学率は増加傾向で昨年の大卒者数は初めて1千万人を突破した。長引く「就職氷河期」に不満を募らせる若年層。政府は効果的な対策を打ち出せず、社会不安につながる事態を危惧する。

中国江蘇省淮安市で開かれた就職説明会に詰めかけた大学生ら=7月(共同)
中国江蘇省淮安市で開かれた就職説明会に詰めかけた大学生ら=7月(共同)

 「大学1年生のころから約600件の企業にオンライン登録して就職活動を続けてきたが、一件の内定もない」。北京に住む大学3年の女性(21)は卒業を来年に控え、焦りを隠さない。卒業後も職探しを続ける先輩も多く「ストレスが大きい」とこぼした。
 就職難はコロナ禍前から続き、不満が表面化しつつある。昨年11月には厳格なコロナ対策への抗議が全国に拡大。主力は若い世代だった。政府は「大規模失業に伴う群衆による突発事件」への警戒を強める。ただ専門知識を生かせる職を希望する大卒者の受け皿は限られ、企業と若者のミスマッチが構造的な問題だ。
 中国国家統計局によると、都市部の16~24歳の失業率は今年4月が20・4%、5月が20・8%、6月が21・3%となり、記録が確認できる2018年以降で最悪を更新した。
 北京大国家発展研究院の張丹丹准教授は、就学も仕事もせず親に依存する若者らが約1600万人おり、今年3月の若者失業率は46・5%に上ると試算。実態は政府統計より深刻とみる。
 危機感を抱く習近平指導部は若者の就職促進を優先政策に位置付け、オンラインによる就職支援サービスの強化や、若年層の職業教育などに取り組む。今年の都市部の新規就業者数目標を昨年より100万人増の1200万人に設定し、雇用確保への「自信と決意」(国家発展改革委員会)を誇示した。
 一方、政府は若者失業率の公表を7月分から停止。高失業率への不満を刺激するのを避ける狙いがありそうだが、事態打開への道筋を描けない余裕のなさを印象付けた。


 就職氷河期
 日本では1990年代半ばごろから景気後退の影響で多くの企業が新卒者の採用を見合わせたため、就職できない学生が増えた。リクルートのワークス研究所によると、大学院生・大学生への新卒求人倍率は2000年卒で1倍を割った。中国では18年ごろから、中小企業を中心に資金繰りの悪化などによる採用の絞り込みが本格化。新型コロナウイルス感染症拡大に加え、IT大手への締め付けなど習近平指導部の経済政策も状況悪化に拍車をかけたとされる。

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