中国人民銀行、０・１％利下げ　景況悪化受け金融緩和

　【北京共同】中国人民銀行（中央銀行）は２０日、金融機関の貸出金利の目安となる「ローンプライムレート（貸出基礎金利、ＬＰＲ）」の１年物を０・１％引き下げ、３・５５％とした。事実上の政策金利で、利下げは昨年８月以来１０カ月ぶり。

　習近平指導部は新型コロナウイルス感染を徹底的に抑える「ゼロコロナ」政策終了後の経済回復を目指してきたものの、製造業を中心に景況感は悪化。若者の雇用問題が深刻で輸出も低迷しており、金融緩和が必要だと判断したとみられる。
　住宅ローンの目安となるＬＰＲの５年物も０・１％引き下げ、４・２％とした。５年物の引き下げも１０カ月ぶり。不動産市場もコロナ禍からの回復が鈍化し始めており、取引拡大を後押しする。
　景況感の悪化は、若者がコロナ禍による失業などで貯蓄を取り崩し、住宅など大型消費に向かう意欲が盛り上がらないためだとの見方が多い。５月の消費者物価指数（ＣＰＩ）は前年同月比０・２％の上昇にとどまり、物価高を抑えるための欧州などの利上げとは逆方向の景気刺激策に踏み切った。
　中国国家統計局の５月の製造業購買担当者指数（ＰＭＩ）は、好不況の節目の５０を２カ月連続で割り込んだ。工業生産は上海市のロックダウン（都市封鎖）があった前年同月と比べても３・５％増にとどまっていた。
　人民銀は今月１５日、ＬＰＲ算出の目安となる市中銀行に資金を供給するための「ＭＬＦ（中期貸出制度）」の金利を引き下げ、ＬＰＲも下げるとの観測が強まっていた。

　ＬＰＲ　中国人民銀行（中央銀行）が金融政策のために活用している事実上の政策金利で、ローンプライムレート（貸出基礎金利）の略。２０１９年８月から現在の制度で運用が始まった。中小企業などへの融資に影響を与える１年物と、住宅ローン金利の基準となる５年物の２種類があり、人民銀が大手銀行の金利に基づき算出している。