テーマ : 新型コロナ・全国

コロナ教訓、国の指示権を拡充 非常時、自治体に対応義務

 新型コロナウイルス禍を教訓に、行政体制を見直していた政府の地方制度調査会(地制調)の専門小委員会は9日、国の権限を拡充する答申案をまとめた。災害や感染症拡大など非常時であれば、個別法に規定がなくても、自治体に傷病者搬送や店舗の営業制限など必要な指示ができる新ルールを法制化する。自治体は対応義務を負う。国会議員らも参加する地制調総会を年内にも開き、正式決定する。
 政府は答申に沿って来年の通常国会に地方自治法改正案を提出する予定。新ルールに基づき指示権を発動できる要件や手続きの詳細は今後詰める。自治体側は「指示が乱発されれば地方の自主性を損なう」として、要件と手続きの厳格化を求めている。
 答申案などによると、コロナ禍初期にあったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での集団感染では、都道府県境を越えた患者の移送調整が難航し、受け入れ先が決まらなかった。当時の個別法はこうした事態を想定しておらず、法を根拠に国が必要な指示をすることができなかった。
 国の指示権は現状、個別法に規定があれば発動が可能。違法な事務処理をした自治体に対しても地方自治法に基づき是正を指示できる。答申案は、この二つに該当しなくても「大規模な災害、感染症のまん延など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」では指示を出せる新ルールを自治法に明記するよう求めた。
 2000年の地方分権一括法の施行以降、国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に変わった。答申案は、この原則を維持する考えを強調し、新ルールは「現行法に影響を及ぼすことがないよう特例として設けるべきだ」とした。
 発動には閣議決定を経るよう求めた。コロナ禍では、国が感染状況を分析するのに必要な情報提供が滞ったとして「自治体に資料や意見の提出を求めることができるようにすべきだ」との考えも示した。

新型コロナ・全国の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞