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テーマ : 函南町

宇佐美麦酒製造(伊東)小川大河さん 消費者の好みを熟知 売り手から醸造側へ【しずおかクラフトビール新世代⑪】

 クラフトビールを売る側からつくる側へ-。宇佐美麦酒製造(伊東市)の小川大河さん(34)は、営業専従から醸造スタッフに転身した、県内ビール業界では数少ない人物だ。

麦汁の入ったタンクにホップを投入する小川大河さん=19日、伊東市の宇佐美麦酒製造
麦汁の入ったタンクにホップを投入する小川大河さん=19日、伊東市の宇佐美麦酒製造
usami beer セゾン(右)とみかんdeホワイト
usami beer セゾン(右)とみかんdeホワイト
麦汁の入ったタンクにホップを投入する小川大河さん=19日、伊東市の宇佐美麦酒製造
usami beer セゾン(右)とみかんdeホワイト

 2008年に「風の谷のビール」で知られる酪農王国(函南町)に入社。クラフトビール専門の営業マンとして、市場が拡大する様子を、販売の最前線で体感した。
 県内外の酒販店や飲食店を巡り、時には飛び込み営業をかけて販路拡大を図った。小売店用の販促グッズを自作し、売り場の棚から付加価値の高さを訴えた。「消費者の手元に鮮度を落とさずに届ける。工場を出たところから店頭で買ってもらうまでが責任領域だと認識していた」。国内各所で行われる「ビアフェス」に積極出展し、来場者との交流からニーズをくみ取った。台湾のビアフェスにも参加した。
 クラフトビールの認知度の高まりを「スタイル」という言葉の浸透ぶりから実感した。10年代半ばのことだ。「ラガー、ペールエール、IPA-。酒販店や消費者がスタイルの違いを理解するようになった。それぞれのスタイルがどんな味、香り、色をしているのか、いつの間にか想像できるようになっていた」
 ジャンルを押し広げている自負はあった。だが、醸造へのあこがれはついえなかった。仕事を離れて独学を重ねた。19年、念願かなって宇佐美麦酒製造でビールをつくる立場に。消費者との接点の数々を、ものづくりに生かそうと努力を重ねている。「小売店や飲み手がクラフトビールをどう理解しているか、何を好むかを知っているのが強み」
 醸造所は1998年に設立され、運営会社が2度変わった。仕込み、発酵、熟成などのタンクは23基。県内屈指の陣容と言える。
 仕込みから瓶詰めまで約4週間。「発酵時にタンクの上から泡が湧いている様子を見ると、酵母が生きていることを実感できる。香りも日によって異なる」。醸造に携わる喜びをかみしめながら、経験値を高めている。
 (文化生活部・橋爪充)

 ■usami beer セゾン
 ■みかんdeホワイト

 2015年から展開する、伊豆の海洋深層水を使った「usami beer」ブランドのセゾン(右)は、酵母とホップが醸し出す華やかな香りが特徴。アルコール分4.5%だが、濃い色も相まって、十分な飲み応えを感じる。
 関連会社が運営する農園で採れたミカンを使った「みかんdeホワイト」は、東京大のサークル「みかん愛好会」が開発に協力したエール。果汁に加え、果皮を干したオレンジピールも用いた。口当たりは優しく、ベルギーのホワイトエールを思わせる風味とのど越しが感じられる。

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