全国のワサビ求め バイクで走破 伊豆わさびミュージアム運営の2人 活用のヒント探る
コロナ禍でワサビを求めてオートバイの旅を始めた男性2人が10月、47都道府県の走破を達成した。函南町の伊豆わさびミュージアムなどを運営する山本食品の山本豊社長(60)と、同施設で屋内わさび田の造成に協力した水道設備業リブテックの野田始彦会長(56)。若者のワサビ離れもささやかれる中、各地で「日本特有のスパイス」の魅力を追った。
2020年6月の静岡市を皮切りに、愛知、岐阜、長野などのわさび田を目指してスタート。今年10月に訪れた最後の沖縄県まで走行距離は3万キロに上り、各地の食文化を通じてワサビに対する意識の違いや新たな活用法のヒントを探った。様子は映像に収めて編集し、山本社長が立ち上げたユーチューブ「わさびチャンネルizu」で発信を続ける。
ソバ文化が根強い長野県の安曇野はワサビの味わいがあっさり、海に近い伊豆はねっとりと濃厚で刺し身に合う―。気候、水温、水流が異なる生産地はわさび田の仕組みや水の管理方法もさまざまで、各地の食文化と強く結びつく。全国にはワサビ生産と無縁の地域も多く、2人は地元料理に合うワサビの使い方など新たな可能性にも迫った。
東日本を襲った19年の台風19号、世界に急拡大したコロナ禍でわさびミュージアムも大きな影響を受ける中、逆境を跳ね返すべく始まったオートバイの旅。刺し身、そばの薬味として代表的なワサビはコショウやトウガラシと比べて活用の幅が狭く、山本社長は「自分たちわさび屋が食べ方を提案してこなかった怠慢」を痛感したという。清流が育むワサビを「日本で唯一のハーブ」と自負する2人は、「まだ伸びしろが大きな食材。ワサビはもっと面白くなる」と力を込めた。