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テーマ : 函南町

“不屈の剣” 障害、大けが…試練越え七段に至る 函南の渡辺正行さん

 障害や大けがなど度重なる試練を乗り越え続ける剣士がいる。ポリオ(小児まひ)の影響で左手足が不自由な函南町柏谷の渡辺正行さん(67)。「苦しく、厳しく、つらくなった時こそチャンスが生まれる」。5月中旬には合格率2割という難関の剣道七段を取得した。

稽古に励む渡辺正行さん=5月下旬、伊豆の国市
稽古に励む渡辺正行さん=5月下旬、伊豆の国市

 渡辺さんは1歳の時に風邪が発端で仮死状態となり、左半身が不自由になった。大仁中(伊豆の国市)進学時には父の反対を押し切り、柔道部に入部した。大学からは剣道一筋。しかし、自動車部品製造会社に勤務していた30代の時に機械で右手親指の付け根を負傷。生きがいの剣道を続けたい一心で握力を鍛え続け、親指以外の4本で竹刀を握り復活した。
 段位もとんとん拍子に取得できたわけではない。四段は10回以上、五段は17回目の挑戦で合格した。六段を取得した直後の2016年8月にも不運が襲った。七段取得に向けて気持ち新たに臨んでいた稽古中に人とぶつかり転倒。左足の大腿(だいたい)骨を骨折し、手術、入院を余儀なくされた。怖さがあって基本姿勢の正座やそんきょができない日々が続いた。それでも剣道への強い思いでリハビリに取り組み、年明けには練習復帰した。
 試合では、障害があるからと手加減する相手はいない。体勢を崩そうと容赦なく体をぶつけて来る場合もある。周囲からは「まだ七段には早い」と言われることもあった。それでも常に「なにくそ」と心の中で叫び立ち向かった。昇段審査では「攻め、間合い、残心を意識した」。4本を打ち込み、2回目の挑戦で見事合格した。
 現在は韮山剣道教室に週2回通い、OB会長を務める田方農高剣道部でも指導を続ける。「やるからには諦めず、やり通す姿勢を見せていきたい」。不屈の魂で剣の道を突き進む。

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