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テーマ : 函南町

小規模保育所「3歳以上受け入れ」 静岡県内、検討の動きなし 定員、設備余裕なく

 原則0~2歳児を預かる小規模保育所で「3歳以上も受け入れることができる」とした4月の国の通知に対し、静岡県内は現時点でどの市町も新たな受け入れを検討していないことが18日までに、静岡新聞社の取材で分かった。施設の定員や設備面で余裕がないのが主な理由。保護者にとって転園せず同じ施設に続けて預けられる利点がある一方、実施にはハードルが高い状況が浮き彫りになった。

小規模保育所で遊ぶ園児ら。3歳以上の受け入れには課題が多い=8月下旬、藤枝市
小規模保育所で遊ぶ園児ら。3歳以上の受け入れには課題が多い=8月下旬、藤枝市

 認可小規模保育所を有する27市町(4月1日時点)に電話で尋ねた。最も多い53施設がある浜松市は「0~2歳児の保育需要が大きいので(3歳以上を)受け入れる予定はない」(幼児教育・保育課)とし、48施設を有する静岡市も「保護者からニーズは寄せられていない」(子ども未来課)とした。
 「3~5歳児の受け皿は足りている」(沼津市)「3歳以上を受け入れるためのスペースを施設に確保できない」(函南町)「3歳は集団保育が必要になる時期。小規模での3歳以上の受け入れができるといって推進していくものではない」(森町)などの声もあった。一部の自治体には、もともと3歳以上を受け入れていた認可外の小規模保育所が認可を受け、そのまま特例的に3歳以上を預かっている事例があった。
 国の通知には、小規模保育所卒園後の保育施設探しに苦労する“3歳の壁”の解消に加え、集団生活が苦手な子の受け皿を小規模保育所に担ってもらうとの狙いがある。こども家庭庁成育局の担当者は「多くの園児がいる環境での生活が難しい子が増えていることは事実」と説明する。
 ただ、こうした狙いは自治体や現場に浸透していない。藤枝市など県中西部に6園ある「保育所きぼう」の藤木温美統括園長(49)は「国は目的をしっかりと打ち出してほしい。パワーあふれる3歳以上の子を小さな施設で預かることは容易でない」と話す。乳児と幼児で昼寝に必要な時間が異なることなど、現場の課題は少なくない。
 保育政策に詳しい大阪教育大の小崎恭弘教授(55)は「集団生活が苦手な子を受け入れるのは賛成だが、そういう子をケアする専門性を小規模保育所は担保できるのか」と疑問を投げかける。一方で待機児童が年々減少し、多くの保育施設で定員割れが生じている中、3歳以上の受け入れは小規模保育所にとって「生き残り戦略」(小崎氏)になる可能性も指摘した。
 (社会部・木村祐太)

 <メモ>小規模保育事業は2015年度にスタートした子ども・子育て支援新制度で市町村の認可事業に位置づけられた。定員は6~19人。保育士資格がある職員の数などに応じてA、B、Cの3類型がある。通常の認可保育所に比べて少ない面積や職員数で済むため、待機児童対策として全国に広がった。これまでも地域の実情に応じて特例的に3歳以上の受け入れは認められていたが、今後は自治体が必要に応じて柔軟に判断できるようになる。県こども未来課によると、認可施設は4月1日時点で県内27市町に計271カ所あり、計約4500人が通っている。

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